過去に文春オンラインで反響の大きかった記事ベスト5を発表します。ライフ部門の第1位は、こちら!(初公開日 2019年3月18日)。
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南栗橋という駅は、東京に暮らしている人にとってなかなかにナゾな駅である。
どういうところがナゾなのかというと、目に触れる機会はかなり多いのに、近くに住んでいる人には申し訳ないが正体不明なのである。東急田園都市線・地下鉄半蔵門線から直通の南栗橋行、そして地下鉄日比谷線の南栗橋行もあるから、特に東急沿線の人など「南栗橋」の文字を見ない日はないだろう。とはいえ、行ったことがないからどこにあるのか、どんな駅なのかがよくわからない。
北千住、越谷、春日部を通り越して……
その上にややこしいことに、“南”栗橋なのである。栗橋駅ならわかるのかというとそうでもないけれど、漠然と「こういう地名なんだな」と納得できる。ところが“南”が付くだけで途端に正体不明感が高まる。知らない地名のさらに“南”、範囲が狭まるというよりはもっと茫洋としてしまうのだ。同じように地下鉄から直通する電車の行き先には久喜や東武動物公園があるが、これらが行かずともなんとなくイメージできるのとはずいぶんな違いである。
というわけで、そんな首都圏きってのナゾの終着駅、南栗橋駅の正体を知るべく東武スカイツリーラインに乗った。ここで簡単に南栗橋駅がどこにあるのかを説明しておくと、東武日光線の駅で、埼玉県久喜市にある。日光線と聞くと観光ムードが高まるが、南栗橋は見ざる言わざる聞かざるの日光よりはだいぶ東京より。スカイツリーラインと分岐する東武動物公園駅から3つ目の駅だ。そうは言ってもだいぶ遠く、スカイツリーラインに揺られて北千住、越谷、春日部も通り越す。