驚くほど李容洙さんの今月の告発と内容が似ている。批判はむしろより激しい。16年も前に元慰安婦からこのような声明が出ていた事に驚く。しかしこの声明はほとんど注目される事は無かった。当時は盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権で、慰安婦問題を担当する女性家族省のトップは、元挺対協共同代表の池銀姫(チ・ウンヒ)氏だった事が影響していたのかもしれない。
石碑に刻まれなかった元慰安婦の名前
2016年8月、挺対協はソウル中心部にそびえる南山(ナムサン)に「記憶の場所」と名付けた石碑を建立した。「記憶の場所」には、元慰安婦247人の氏名が刻まれている。しかしそこには、2004年に挺対協に反旗を翻したシム・ミジャさんの氏名は無い。あたかもそのような名前の元慰安婦など存在しなかったかのようだ。挺対協を引き継いだ正義連はシムさんの名前を刻まなかった理由を韓国メディアに問われたが、「理由が多い。おばあさんの事情は言及しない」と回答しなかった。
元慰安婦を踏みにじってきたのは誰なのか
日本政府はこれまで、アジア女性基金や2015年の日韓合意を通じて元慰安婦の女性たちの生活を支援してきた。これらの日本政府の動きを激しく攻撃してきたのは、挺対協・正義連だ。韓国では絶対不可侵の存在である元慰安婦と行動を共にし、派手なパフォーマンスを繰り広げる中で、挺対協・正義連もまた不可侵のタブーとなっていた。だが日韓合意では、当時生存していた元慰安婦47人中7割以上に当たる35人が日本政府からの資金を受け取っている。挺対協・正義連と行動を共にし合意受け入れを拒否した元慰安婦は、実は3割にも満たない少数なのだ。
今回発覚した一連の疑惑を受け、こうした事実も韓国社会で注目されつつあり、挺対協・正義連への見方が変わってきている。与党の次期大統領候補として最有力の李洛淵(イ・ナギョン)前首相が「問題を重視している」と述べるなど、もはやタブーではなくなったと言える。また、韓国メディアは検察が尹前理事長の捜査に入る方針を固めたなどと伝えている。
1991年に金学順(キム・ハクスン)さんが韓国で初めて元慰安婦として実名で名乗り出てから29年、元慰安婦を踏みにじってきたのは誰なのか、慰安婦問題はなぜ今も韓国でくすぶりつづけているのか、その答えが一連の疑惑の解明で見えてくるかもしれない。