「これ、いい?」目で聞く“社会的参照”
――単なるやんちゃで片付けていいものか、発達障害の傾向があるかはどこで見分けるのでしょうか。
松永 まず1歳半検診で、言葉が5~6個出るか、自分の知っているものや欲しいものを指で指すことができるかの2つが大切なポイントになります。自分の意思を伝える指さしはとても大事なことで、これができないと親子間のコミュニケーションが成立しません。
コミュニケーションに関していうと、「共同注視」といって、たとえばお母さんが時計を見るとき子どもも一緒に見ることができるかどうか。定型発達児なら、たとえばお母さんがポケモンのポスターを見ると、つられて子どもも見ます。あたかも映画館の恋人同士のように、親が見てるものを子どもも見て、ふたりで心を通い合わせるわけです。
親にたいして「これ、いい?」って目で聞くような「社会的参照」ができるかどうかも大切なポイントです。1歳半になるとやっていいこと・いけないことの区別がつき始める年齢なので、本来は、これで遊んでいいかなと思ったら、「遊んでいい?」って目で聞けるようになる年頃です。
同じことをずっと繰り返すとか、ひとつのことに執着する「こだわり」の強さが見られるようなら要注意です。保育園の水道の蛇口をひねって流れる水をずっと見てるとか、ミニカーで遊ばずにただひたすら1列に並べているといった執着です。
注意欠如多動性障害の症状は「不注意、多動、衝動性」の3つ
――それは親としては不安になりますね。
松永 言葉の遅れのある自閉症スペクトラム障害は多くの場合に1歳半検診の段階で診断がつきますが、そういう傾向がそれほど強くない子は3歳検診で二度目のチェックをします。
この時期はとくにADHDに注意します。注意欠如多動性障害とは、症状としては「不注意、多動、衝動性」の3つからなりますが、全てベースにあるのは不注意です。ひとつのことに集中する力がないからいっぱい動いたり、衝動的に思ったことをパッとやってしまう。3分と椅子に座っていられないとか、机の引き出しを上から下まで全部開けるとか、家電のスイッチを全部いじってひねるとか、なにか衝動が起きると止めることができない状態です。ただ、ADHDは5歳を過ぎないと明確な診断はつけられません。うちの娘もそうだったのですが好奇心旺盛でなんでもかんでも触る子だったとしても、3~4歳であまり不安になる必要はありません。親の育て方ひとつでは自然と改善できる場合も多くあります。