コミュニケーションの後に目を合わせる
――親は何をしたらいいのでしょうか。
松永 発達障害の傾向が見られるとき、一番大切なのは「親子で一緒に遊ぶこと」です。細やかにコミュニケーションを取るようにして、たとえばコチョコチョでもいいし高い高いでもいいしハグでもいいし、言葉をいっぱい浴びせて体にタッチします。そのあと必ず目を合わせましょう。発達障害の子たちって親と目が合わなかったりしますから、ボディタッチと声かけの刺激と、刺激を与えたあとに必ず子どもと視線を合わせてコミュニケーションを交換します。
声をかけて子どもとタッチして、目と目を合わせてできたら褒めることを繰り返すんです。そういう遊びを日常生活の中でやっていくうちに、うまく解決する子も沢山います。だから幼少期のお子さんに発達障害の傾向が見られても動揺せず、あたたかく見守って、一緒によく遊んでほしいと思います。
――日常の遊びの中でのコミュニケーションが大切なんですね。
松永 そうです。たとえば指さしができない子には、子どもの手にグーを作ってあげて、「はい、人差し指出して」って、「はいこれ、ポケモン、カレンダー、ポケモン、カレンダー」って一緒に指さしをやらせるんですね。自分からできない子には、そうやって手をとって手伝います。とにかくまずは成功させましょう。手助けして成功させてあげて、ちょっとでも成功したら褒める。これを繰り返すのが発達障害の子を育てる療育の基本です。
このアプローチは、じつは健常児にも不得手な部分があったとき、伸ばすやり方につながります。子どもにできないことや苦手なことがあるとき、けなしたり、叱りつけても何の意味もありません。その場で適切に手助けをしましょう。
そして、子どもがいつもやりがちな失敗やトラブルは、ことが起きてから叱るのではなく、事前に予習させることが肝心です。たとえば「列では順番を守ろうね」とか「お友達のおもちゃを勝手にとらないようにしようね」といったことは、よく言い聞かせて予行練習を家でします。そして外でうまくできたら大いに褒めます。その、うまくやれたという積み重ねが子どもの自尊感情を育みます。
叱りつけるというのは親がイライラして感情を爆発させてるだけのことが多く、コミュニケーションとしては最低なんですね。大事なことは成功体験を味わわせて褒めて伸ばすということ。それが私の考える「子どもを尊重する育児」です。とくに日本人は「〇〇しちゃダメ!」って叱りつけがちですが、これはほとんどのシチュエーションで、意味のない言葉です。