感染症は運命、院内感染は……
運命か人為的なものか――。この二つを巡る葛藤を救命救急センターの医師も抱えている。通常であれば新型コロナ患者で医学的適応のない高齢者には人工呼吸器はつけないという病院において、院内感染の患者の場合は高齢であろうとも出来うる限りの治療を行うという。なぜなら、感染症は運命の部分があるが、院内感染は人為的なもので防ぎ得たと見なされるからだ。
感染対策においても、日本は独自に社会や国民性に即した戦略を練ってきた。医療資源の配分をめぐる倫理的な課題についても、日本ならではの議論が必要である。
有名人や金持ちが優遇されるべきか?
トリアージは優生思想や差別と結びつきやすい側面があり、その点も慎重に考えなければいけない。議論を避け、個々に任せておけば、なし崩し的により不平等な選択が行われる可能性があるからだ。
志村けんさんや大企業の元社長が新型コロナで亡くなった時に、「最高の医療を受けられたはずなのに」という意見を目にした。実際にはそのようなことがなくとも、有名人や金持ち、医療関係者の家族は、優先して良い医療を受けられるはずだという意識を持っている人は少なくない。万が一そういった基準で資源の配分が行われるようになれば、それこそもっとも不平等な選択と言えるだろう。
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まずは現場の声に耳を傾けたいと、選別せざるを得ない医療従事者や、選別される側になり得る高齢者や障害者が抱える葛藤を取材した。詳しくは「文藝春秋」6月号および「文藝春秋 電子版」掲載のレポート「医療崩壊『命の選別』が始まる」をお読みいただきたい。
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医療崩壊 「命の選別」が始まる
【文藝春秋 目次】<総力特集202頁>緊急事態を超えて ウイルスVS.日本人 山中伸弥 橋下 徹/磯田道史「続・感染症の日本史」/WHOはなぜ中国の味方か
2020年6月号
2020年5月9日 発売
定価960円(税込)