過去に文春オンラインで反響の大きかった記事ベスト5を発表します。健康部門の第1位は、こちら!(初公開日 2019年3月9日)。
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いまかけているそのメガネ、いつ作ったものですか?
もし、3年以上前のものなら要注意。医学的に見て、メガネの耐用年数は3年。つまり、同じメガネで、同じ季節のオリンピックを2度見ることは、あってはならないのです。
この掟を破るとどうなるのか――。
あなたの「脳」が、人知れず疲弊していくのです。
肩こりや頭痛、吐き気などの症状を呈することも
メガネを作り直すきっかけは人それぞれ。
ファッション的な理由もあれば、「どうも最近メガネの度数が合っていないような気がする……」という理由でメガネショップに行く人もいる。
そして、後者のケースは、目の受けている負担がきわめて大きいことを示唆するのだ。
「視力が下がったり、メガネの度数が合わなくなっても、脳が自動的に補正してくれるので、日常生活で困るケースは少ない。しかし、それでもモノが見えづらくなるということは、脳の補正能力を超えた状態が続いている証拠。これが続くと脳が疲れてしまい、肩こりや頭痛、吐き気などの症状を呈することになります」
と語るのは、東京・江戸川区にある二本松眼科病院の眼科専門医、平松類医師だ。
モノを大切にする心は大事だが、こと「メガネ」に関しては、あまり大事にし過ぎると「目」を通して「脳」にダメージを及ぼすことになる――ということは覚えておきたい。
視力が変化する「40から55歳あたり」
平松医師によると、人の視力はつねに変化し続けるが、中でも人生で2度、大きな変革期を迎えるという。
1回目は「10代」、2度目は「40から55歳あたり」だ。
「10代は、まさに成長期による変化。人間の眼球の直径は生まれたときは16ミリ程度だが、成長すると平均24ミリ程度まで大きくなる。この直径が長くなるほど近視に近づくので、人の目は成長とともに近視に向かっていくのです。
一方の40歳から55歳にかけては、老眼が急速に進む年代です。中でも43歳から50歳の間は、特に“調節度”という、ピントを合わせる機能が急激に低下する時期。加えて、45歳を過ぎると脳の補正能力も落ちてくるので、小まめにメガネを作り直さないと、すぐに度が合わなくなってしまうのです」(平松医師)
肩こりや頭痛に悩む人が、メガネを作り直すことでそうした症状が嘘のように消えることは多い。そんな人たちは、目に合ったメガネをかけていたのではなく、メガネに目を合わせていただけのことなのだ。
人付き合いの難しさで疲弊する人が多い中、知らず知らずのうちにメガネにまで気を遣っていたとは、現代社会のストレスの闇は奥深い。