文春オンライン
そもそも、なぜ異例の出世ができた? 黒川前検事長が陰で呼ばれていた「意外なニックネーム」

そもそも、なぜ異例の出世ができた? 黒川前検事長が陰で呼ばれていた「意外なニックネーム」

2020/05/26
note

 これは実は、大阪地検特捜部による証拠改竄事件に絡んで設置された検察の在り方検討会議の座長に、法相を退任したばかりの千葉氏が指名されたことを受けて、検討会議の事務局は黒川氏に任せたいと千葉氏たっての希望があったからなのです。ようするに黒川氏は、類い希なる『政治家たらし』なのです。それが現在の安倍政権内でも、いかんなく発揮されてきたということなのです」

「週刊文春」の2016年1月28日号がスクープした、当時の甘利明経済再生担当相と公設秘書が建設業者から口利きの見返りに現金を受け取りながら政治資金収支報告書に記載していなかった問題では、甘利氏の大臣辞任後にあっせん利得処罰法違反容疑で2人は東京地検特捜部に刑事告発されたが、不起訴となるなど、黒川氏の“暗躍”が噂された「政治とカネ」の疑惑も少なくない。

林氏の前に割り込ませる形で黒川氏を次官に

「あっせん利得処罰法はもともと適用しづらい法体系になっているので、暗躍はあくまでも噂でしょう。ただ、安倍官邸が2016年に林氏の前に割り込ませる形で黒川氏を事務次官に据え、さらに黒川氏を次官に留任させるために林氏を名古屋高検検事長に追いやったのは、政治家案件で行われる検察首脳会議に出席できる事務次官に黒川氏を留まらせ、森友学園と加計学園をめぐる問題で重しとなることを期待したからだと思います。捜査を止めることはできませんが、次官ポストに安倍官邸の“代理人”がいることで現場にはプレッシャーとなるうえに、官邸側としても黒川氏を通じて検察側の思惑を知ることができるからです。黒川氏はその役割を十分に果たしたのです」(同前)

ADVERTISEMENT

検察庁 ©文藝春秋

 検察ナンバー2のポストは安倍政権が最も窮地に立たされたモリカケ問題を無事乗り切ることができたことへの論功行賞というわけだ。だが、安倍政権に新たな疑惑が発覚する。桜を見る会の問題だ。そしてこの問題は昨年末の国会閉会段階でも収束せず、越年となったことで、今年2月8日に黒川氏を定年退官させるわけにはいかなくなってしまったというわけである。