「ミントをわざわざ取り寄せますか?」と税関関係者
本人は「ミントだと思った」と供述しているが、それを額面通り受け取る向きは捜査陣のなかにはいないだろう。ミントの菓子であろうが、ピーナッツバターの瓶であろうが、日本でもありふれた食材を米国から取り寄せる必要性がないからだ。
「わざわざ取り寄せますか? 怪しいからこそ、箱が開けられることになるんです」と税関関係者は言う。
女子大生の逮捕は偶然ではない。近年、国内では若年層の麻薬がらみの逮捕が増加する兆しがあるのだ。顕著なのは大麻取締法違反だ。
「大麻が合法な国がある」と多くの逮捕者が供述
警察庁のまとめによれば、女子大生と同世代の20~29歳で、大麻取締法違反容疑で検挙された数は、2015年に890人だったのが、19年には1950人と倍増。20歳未満に至っては、同じ期間に144人から609人に急増している。30歳未満だけで検挙者の過半数を占めているのだ。14年に吸引方法が似通っている危険ドラッグの規制が強化されたことも要因だが、捜査関係者は「諸外国での大麻解禁の流れも影響している」と話す。
実際、警察庁が19年に聴取した大麻取締法違反容疑による逮捕者631人のうち、過半数に当たる331人が「大麻が合法な国がある」ことから大麻の有害性を軽視したと回答。海外の大麻合法化の流れが罪の意識の低下につながっていることが疑われる。
海外からのトレンドの波及がみてとれるのは、コカインも同様だ。コカインはリラックス作用がある大麻と違い、興奮系の麻薬で、覚醒剤よりも効き目が短い。ハリウッド映画で、机に白い粉を縦に並べ、紙幣を丸めて鼻で吸う映像をみた向きもあるかもしれない。あれがコカインだ。
そもそも日本ではコカインの消費量は微々たるものにとどまっていたが、14年ごろから検挙者が増加し始めている。俳優・歌手のピエール瀧がコカインを使用した疑いで逮捕されたのも記憶に新しいが、暴力団関係者も「クラブのVIPルームなどでコカインを囲んでパーティーをすることが国内でも数年前から流行り始めた」と証言する。
かつて日本の違法薬物市場は覚醒剤が主流で、大麻、コカイン、ヘロイン、MDMAなどが主流の欧米諸国と一線を画してきた。だが、海外旅行客が急増し、海外からのネット情報などが流入するに従い、海外の麻薬事情に通じる人口も増加。徐々に海外の麻薬傾向が国内に輸入されてきたとみられる。