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 ここで冒頭の女子大生に戻れば、捜査関係者の危惧するところがみえてくる。女子大生が密輸したのは覚醒剤。覚醒剤は国内では主流の違法薬物だが、実は若年層に限れば、あまり人気はない。毎年の逮捕者のなかでも30歳未満は1割程度を占めるに過ぎないのだ。

写真はイメージ ©iStock

覚醒剤がトレンドのアメリカでは性動画も蔓延

 だが、今回の逮捕が特別の意味を持つのは、この女子大生が米国帰りという点だ。実は、これまで覚醒剤にはあまり手を出さなかった米国で近年、覚醒剤は主流の違法薬物として乱用が急増しているのだ。

 17年には米国で覚醒剤の過剰摂取で1万人が死亡。これは07年の1300人の8倍近い。ネットでは覚醒剤を吸引してセックスにふける動画も蔓延している。

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 それだけではない。08年には覚醒剤の結晶を密造する高校の化学教師を主人公にしたテレビドラマシリーズまで放映が始まり、13年まで続く人気番組となった。昔から麻薬ネタを映像化する伝統のある米国ではあるが、違法薬物のなかでも依存性が極端に強い覚醒剤をネタにするのは前代未聞。米国でテレビシリーズの制作には市場調査を徹底するとされているだけに、覚醒剤ドラマの放映は覚醒剤がそれだけお茶の間になじみつつあることを物語る。

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 その流行の波と今回逮捕された金沢容疑者が無縁だったと考える方が難しいだろう。金沢容疑者は「大麻やコカインは米国で使ったことがある」と供述しているという。

 海外のトレンドが日本でも反映される——。大麻、コカインで繰り返し訪れた違法薬物の黒船。女子大生による覚醒剤密輸事件は、覚醒剤の若年層での流行が海外から押し寄せる前触れなのかもしれない。