3億ウォンの売却損 「ヒーリングセンター」疑惑で潮目に変化
尹前理事長は4月の総選挙で与党の比例党「共に市民党」から出馬し、当選。候補者として選出されたのは慰安婦問題での功労が大きいといわれた。与党はこの降ってわいたような“事件”に「親日勢力(日本の植民地時代に日本に協力した勢力)による攻撃」だと反発し、親日フレームで押し切ろうとした。
しかし、李さんを親日とするのかという反発も起き、潮目が変ったのは5月中旬。保守系メディアが、正義連が「平和と癒やしが出会う家(通称ヒーリングセンター)」売買を巡り3億3000ウォン(約2900万円)もの売却損をだしていたことなどを報じると、保守進歩問わず、他のメディアも報道に追随。スクープ合戦となり、疑惑はみるみる膨らんだ。
ヒーリングセンター疑惑では肝心の元慰安婦ハルモニが居住していなかったことや、管理していた尹前理事長の父親に数年間でおよそ7600万ウォン(約660万円)が支払われていたことも明るみに出ている。
支援団体の正義連は不透明な会計処理について「単純な会計ミス」と釈明したが、その「ミス」の多さと額の大きさは度を超している。そして、尹前理事長はいくつかの疑惑についてはラジオなど自身に友好的な媒体で釈明したが、ヒーリングセンターの件など肝心の疑惑については沈黙したまま、公の場には姿も見せていない。
20日にはソウル西部地方検察が正義連事務所とソウル市内の元慰安婦ハルモニが住む家を家宅捜査した。中道系韓国紙記者は言う。
「韓国では正義連の元慰安婦支援は善意で行われていたと捉えられており、女性の人権問題として世界にその存在を知らしめるなど功績も認められていました。そのため、聖域化したわけですが、韓国人がもっとも嫌う不透明さの問題や、個人の私腹を肥やす活動だった疑惑が浮上して、『国民をだました、許せない』という雰囲気が一気に広がった」
他の元慰安婦支援団体でも浮上する疑惑
一方、元慰安婦ハルモニを支援する別の団体、「社会福祉法人大韓仏教曹渓宗ナヌムの家」(分かち合いの家)でも3月、職員が内部告発をしている。疑惑はやはり寄付金絡み。告発内容は「昨年、25億ウォン(約2億1800万円)を超える支援金の中でハルモニに使われたのは6400万ウォン(約550万円)。ここは無料の養老施設というだけで治療や福祉は提供されていなかった」というもの。
さらに、「団体は60億ウォン(約5億2000万円)以上の不動産と70億ウォン(約6億1000万円)を超える現金資産を保有していて、元慰安婦ハルモニのために使ってほしいと寄付されたそれらの資金は高齢者の高級養老施設の建設に使われてしまう」とも訴えている。