リハーサル時の格好のまま現れたハラさん
2日後、彼女のマネージャーから日本でよく取り寄せている商品が伝えられた。ご飯に乗せて食べている明治屋の缶詰「プレミアムほぐしコンビーフ」、新潟の小さなメーカーが作る鮭茶漬け、韓国の農協製のキムチの3点だった。このうちキムチは、購入希望者が製造元に直接問い合わせできないのでまず候補から外れ、残る2点を編集部で検討した結果、鮭茶漬けを紹介することになった。さらにマネージャーとの交渉を経て、インタビューは11月19日の午後1時30分からに決まった。ハラさんの全国4大都市ツアーの最終日、Zepp Tokyo公演の昼の部の幕が上がる直前に、応じてくれるという。
インタビュー当日、Zepp Tokyoに到着してみると、開場の1時間以上前から熱心なファンが列を作っていた。トークショー時と同様、少なからぬオジサンも見られる。
取材用の控室に通されて間もなく、ハラさんが現れた。リハーサル時の格好のままだという、ゆったりした黒のTシャツにジーンズ、黒のロングブーツ。そのまますぐZeppの外のお台場界隈を歩いても何の違和感もない、シンプルな服装だった。
取材の趣旨はあらかじめ伝えられていたようで、よけいな説明の必要もなく、すぐに本題に入る。
鮭茶漬けとの出会い「もう大好きになっちゃって」
そもそも彼女が鮭茶漬けという食べ物と出会ったのは、KARAとして来日した9年ほど前の、ホテルの朝食だったという。韓国でも鮭は身近な魚だが、お茶漬けにするという文化はなく、初めて口にしていっぺんで気に入ってしまった。以降、日本にいる時はよく食べるようになったし、自分で材料を買って作ったりもしていたそうだ。肉よりも魚の方を積極的に摂ろうという、自身の体調管理も考えてのことだった。
今回紹介してくれたメーカーの商品を知ったきっかけはと聞くと、
「日本へお料理の勉強に来ている韓国人の友達がいるんです。彼女は私の好物を知っていて、この春、『これ、お勧めだよ』と瓶入りの鮭茶漬けをくれました。食べてみたら、いろいろ使ってきた他のものとはちょっと違うんです。つまり、えーっと……鮭そのものの味をすごく感じました。もう大好きになっちゃって、それからずっとこれを取り寄せてます」
彼女の舌は鋭い、と思った。というのも彼女お勧めの鮭茶漬けは、化学調味料(アミノ酸)や着色料、保存料といった余計な添加物は一切使用せず、塩だけで調味しているのだ。もしかすると、料理に詳しいその友人から教えられた後知恵なのかもしれないが、そうだとしても食への関心が高くなければ口にできないセリフだ。
彼女はとにかく、ご飯が大好きなのだとか。最初の出会いの時の刷り込みによるものなのか、お茶漬けを食べるのはほとんど朝で、週に1回は必ず作るという。鮭と一緒に梅干しも熱々のご飯に乗せ、お茶をかけてねぎと海苔を散らす。そこにあとキムチがあればほかに何もいりませんと、幸せそうな遠い目をした。
一食のお茶漬けで、ひと瓶の半分の鮭を使うのだという。残りの半分は数日後、鮭ご飯を作るのに使うから、1週間でひと瓶空いてしまう。
「だから日本の住まいのキッチンには、何瓶も置いてあるんです」