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北九州市の「第2波」はなぜ起きた? 97人の感染状況から見えてきた“意外なシナリオ”

23日連続「感染者ゼロ」は偶然だったのか

2020/06/01
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「日本全国どこであっても他人事ではない」

「2月から感染が続く北海道のことは遠い世界の話だと思っていました。しかし実際には足元で感染が拡大していました。日本全国どこであっても他人事ではないと思います」と市内在住の40代の男性が語る。

 70代の女性は「現在の感染者の情報を聞いていたら、心配でたまらなくなりました。もしかすると、自分も知らず知らずのうちに感染し、人に移していたかもしれないのですから」と話す。女性は独居高齢者らの見守りボランティアをしている。「できるだけ会わないようにしてきた」とは言うものの、不安が拭いきれないのだ。

 女性は見守り対象の高齢者に会わないかわりに手紙を書くなどしている。「こういう時は文章の方が気持ちが伝わりやすいかもしれない」と考えたからだ。手紙を受け取った高齢者から電話をもらうこともあり、「新しい形のつながりができつつあります」と微笑む。

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©iStock.com

 北九州市は公害のまちと呼ばれた時代がある。洞海湾岸に建ち並ぶ工場から「七色の煙」が出ると言われ、煤煙が空を覆った。廃液が流れ込む洞海湾は、死の海とまで言われた。

「それを変えようと立ち上がったのが女性でした。北九州の女性はたくましさと慈愛に満ちています。あれほどの公害を克服できたのは、女性が先鞭をつけ、市民や行政が一丸となって活動したからでした。そうした歴史を持つ北九州市民だからこそ、今回の感染症には負けたくない。今は、市内全体がしゅんとしていますが、必ず皆で何かをつかんで立ち上がります」。70代の女性はそう力を込めた。

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