福岡県北九州市で新型コロナウイルスの陽性者が急増している。
4月末から23日連続で新規感染者の確認がゼロだったというのに、いきなりだ。病院や介護施設だけでなく、小学校でも集団感染が発生した。
北橋健治市長は「『第2波の真っ只中』にいると認識している」と述べたが、政府は菅義偉官房長官が「第2波が来たとは考えていない」と正反対の見方を示しており、「どうとらえていいのか」と困惑する人もいる。
本当にこれは“第2波”なのか?
だが、明らかな点が2つある。症状が悪化し、救急搬送されるなどして感染が判明した高齢者の多さ。そして、症状が出てからかなりの期間が経過しているのに、ようやく感染が分かった人が複数いることだ。
「ということは既に市中でウイルスが広がっていた証拠だ。第1波は収束しきっていなかったのではないか」という声が市民から漏れる。「自分もいつ感染するかと思うと気が滅入る」(40代の男性)と話す人もいて、市内を得体の知れない不穏な空気が覆い始めている。
人口約95万人の北九州市は、全国に20ある政令指定都市の中でも「ほどよく都会で、ほどよく田舎」と言われる。物価や家賃が安く、救急要請時の病院到着時間が早いのが市の自慢だ。かつては「ガラが悪い人が多い」とされ、ネットを中心に「修羅の国」とまで呼ばれたが、私が知る限り、政令市の中では最も人情味がある。市役所もフレンドリーな職員が多く、「暮らしやすいまち」を自称している。
「人と人のつながりが深いので、隣人や知人に迷惑をかけないようにしようという気持ちが他地区より強いと思います。だからこそ、新型コロナウイルスの流行が始まると、皆で一生懸命に行動を自粛し、感染を抑えようとしてきました。ようやくその成果が出たのだなと、ほっとしていた時でした」と、70代の女性は肩を落とす。
9日連続で計97人の患者を確認
市職員の1人も「市役所本庁舎では、来客に会うのも事務室ではなく、1階フロアを使うほどの気の配り方でした。市内全体でも感染防止にかなりの神経を使ってきたと思います。それなのに、なぜ。この北九州で」と落胆する。
市内の雰囲気が一変したのは5月23日だった。
新型コロナウイルスの新たな感染者は4月30日から出ていなかったが、一度に3人もの陽性者が判明したのだ。その後も連日2~26人の感染が明らかになり、5月31日までに9日連続で97人の患者が確認された。
市が公表した感染状況によると、いくつかの傾向があるように見える。