昭和34年(1959年)創刊の総合週刊誌「週刊文春」の紹介サイトです。最新号やバックナンバーから、いくつか記事を掲載していきます。各号の目次や定期購読のご案内も掲載しています。

2017/08/24

“下ネタ的”とか“おじさん限定”は大した問題ではない

 脱毛が男性にも開かれた昨今であっても脱毛サロンの広告はほぼ若い女性向けであるのと同じように商品ターゲットをおじさんにすることに何の罪もない。大体女は誰にも奢ってもらえないおじさんたちに比べて人の金で酒を飲むことが多いため、ダイエット中でもない限り安い発泡酒や第3のビールなどチョイスしない。そこに男が怒るならまだわかりますけど何で女がつっかかってるのかは謎である。

 ということで下ネタ的であるとかおじさんに限定した動画であるということはおそらくCMを公開中止にするほど大した問題ではないはずだ。つまり問題はその他の理由、簡単に言うと非道徳的だとか不快だとかいう理由にあると考えられる。

©iStock.com

 ただ、夢や願望というのは基本的に極めて非道徳的で他人から見ると不快なものである。道徳的で倫理的な夢などただの目標だ。私の夢は爪を5センチくらい伸ばしてその指に5億くらいの指輪をはめ、「そんな爪じゃ掃除とか料理しにくくないですか?」と聞かれたら「あら掃除とか料理って家政婦がやることじゃないんですか?」と聞き返し、「その指輪素敵ですね、私も買おうかな」と言われたら「これは5億くらいだからこれに似たイミテーションにしたら」と言い返すことである。それはただの夢なので私は3センチくらいの爪で妥協し、コメは無洗米を自分で炊くし、5億円に見えそうな5万円の指輪をはめている。

 ちなみに私がかつていたAV業界というのは男向けに男の夢を男の代わりに実演して売る商売であるが、あんまり残虐な内容なものは規制に引っかかることもあるし、ファンタジーを規制すべきか否かというのは意見の分かれるところである。しかし、何というか「出張先で都合の良い美女とチョメチョメ」なんていうアホくさいけど人を殺すわけでも殴るわけでもないファンタジーに人が過剰に反応する様は、あまりにピリピリしている。

 と、そんなことをブツブツと考えていたところ、今度は牛乳石鹸のPR動画が物議を醸している。家事に協力的で優しい夫が、ふと古き(良き?)時代の家父長制の権化みたいな父親を思い出し、その姿と今の自分の姿との違いにちょっとした疑問を抱く。「親父が与えてくれたもの。俺は与えられているのかなぁ」と。でも結局はその日の疑問も優しい夫であることへの懐疑的な気分も石鹸で洗い流して優しい夫を全うするというストーリー。