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遂にスラム化が始まる!? 逃げ切り世代に牛耳られた“高齢化マンション”の末路

マンションは日本社会の縮図です

2020/06/16
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とにかくカネのかかることはやりたくない

 具体的には、とにかくカネのかかることはやりたくない。自分が生きている間にどうしても必要な事はやらざるを得ないが、特別なことはしなくてもよい、だからなるべくこのままがよい、こういった発想になりがちなのだ。

 実はこの発想は、マンション管理の現場だけで起こっている事象ではない。日本という国家全体にこの発想が蔓延している。今や日本国内の有権者の半数以上が50歳以上だ。つまり、日本で国会議員になりたければ高齢者層の支持を受けなければならない。彼らが好む政策を打ち出していかない限り、その地位は危ういものとなってしまう。

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 この状況をマンション管理に当てはめればどうなるだろうか。高齢化した区分所有者が望む施策しか、理事会は実行しなくなるだろう。それこそがマンションという共同体の運命でもあるからだ。

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給排水管の交換も外壁の修繕も必要ない!?

 では、マンションにおける区分所有者の年齢構成が大きく高齢者側に偏ると、他にはどんな事態が生じるだろうか。

 マンションは共同体として、今後も資産価値を維持し続けていく必要のある建物だ。だが、問題となるのは時間軸である。マンションを今後10年という時間軸で見るのか、あるいは30年という時間軸で見るのかで運営管理上必要とする施策は異なったものとなる。

 今後30年という時間軸で見るならば、たとえばマンション内の給排水管の交換、外壁の修繕はもちろんのこと、設備の更新、共用部のリニューアル、全館のバリアフリー化、災害時に備えた防災設備・防災用品の整備は必須となる。マーケットでも競争力を保ち、新たな所有者や賃借者にとっても魅力的な物件であり続けるために必要な修繕は、継続的に行っていく必要がある。

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 ところが、多くの区分所有者が「自分の代だけ住めればよい」という発想に立つと、施策のほとんどは「俺たちには関係ない」ということで却下されるようになる。共用部を今の時代に適したデザインや仕様に変更して若い世代に借りてもらう、買ってもらうようにしたくても、高齢者たちの「ありのままでよい」というセリフで掻き消されてしまう。