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2020/06/16

そしてマンションのスラム化が始まる

 新陳代謝の行われないマンションは商品としての魅力を急速に落としていく。結果として、亡くなったり、高齢者施設に収容された区分所有者の住戸は、「魅力のない」「古臭い」マンションとして、貸すことも売ることもできない状況に陥り、空き住戸のまま放置されていく。

 空き住戸が増えていけば、その先に待っているのはマンションのスラム化だ。スラム化したマンションは相続財産としての価値もなくなり、誰にも引き継がれないまま野ざらし状態になっていく。

 今後大量のマンションが、築40年のステージに入ってくる。日頃の入念で手厚い管理と建物寿命を伸ばすための大規模修繕を施すことで、不動産価値は保たれていく。だが、将来に引き継ぐ施策を実行していかない限り、世の中にスラム化マンションが溢れかえることになるだろう。

©iStock.com

今後10年が大きな転機になる

 こうした事態を防ぐには、時間軸を長く持ち、マンションという共同体を継続させようという区分所有者や居住者の意思が必要不可欠だ。日本社会に到来した少子高齢化問題が、マンションに大きな影を投げかけ始めている。日本の問題の縮図として、マンションの今後の存続が問われていると言い換えることもできるかもしれない。

 マンションの区分所有者が自分の都合だけに拘泥せず、不動産価値を全員で維持・向上させていくことは果たして可能だろうか。日本は欧米などと比べて私権の強い国と言われる。一見すると欧米は個人主義で私権が強いように考える人が多いが、欧米は「個」に対する意識の強さと裏腹に、「コミュニティー」に対する従属にも大きなウェートを置いた社会だ。つまり、コミュニティーという社会の中におけるプライバシーが確立された社会なのだ。

 したがって、コミュニティーにとって有害な個人の主義、主張は排除される傾向にある。放置された空き家などは近隣住民が勝手に入り込んで草刈りをしたり、地域社会にとって危害を及ぼすと考えられるような場合には強制的に空き家を撤去することも、日本と比べて比較的容易に実行できる。

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 一方の日本では空き家対策特別措置法はできたものの、個人の住宅の敷地内に他の住民が入って草を刈るなどという行為は不法侵入の罪を免れない。

 私権の強い日本でこうした欧米のような発想が浸透するのか、高齢者が中心の社会構造の中でどこまでマンションのスラム化は防げるのか、これからの10年ほどが大きな転機となるだろう。

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