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日本人は文化的に一般に身体的接触が少ないと言われるが、はっぱをかけるために「がんばれよ」という意味で背中をたたくことはありうるだろう。しかし、外国人従業員からすると、一種の暴力として捉えられてしまうのだ。

各国の取り組みの現状

 

以上の相違を基に、世界の取り組みについて現状を紹介する。

パワーハラスメントに関しては、各国により現状や取り組み度合いが違っている。法制度面の取り組みにおいては概して欧州諸国が進んでおり、米国や日本は相対的に遅れているといえる。

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スウェーデンが1993年に世界で一番早くパワーハラスメントの防止が法制化されパワーハラスメントに当たる行為の防止の責務が使用者(企業側)にあると定められている。

フランスもセクシャルハラスメントを含むハラスメント対策に積極的に取り組んできた国である。パワーハラスメント(モラルハラスメント)を受けた場合、補償を受けることができる他、刑法にもモラルハラスメントについての規定があり、懲役と罰金が定められている。フランスでは、刑法の処罰の対象にまでなっている点には注意が必要だろう。

韓国でもパワーハラスメント対策は法制度化が進み、2019年には対策を怠った使用者(企業側)に禁固刑も課すことができる改正労基法が制定された。

一方、米国ではパワーハラスメントに特化した法制度の整備は遅れている。人種差別や性差別の禁止等の広い意味での一環としてパワーハラスメントの防止も捉えられる傾向が強いようだ。

国際労働機関(ILO)における取り組み

2019年6月には、国際労働機関(ILO)総会において、「仕事の世界における暴力とハラスメントの撤廃に関する条約(暴力とハラスメント条約)」が締結された。

同条約では、ハラスメントの定義を「身体的、心理的、性的、経済的被害を引き起こす、または引き起こしかねない、様々な受け入れがたい振る舞いや慣行」としている。

 

日本でパワーハラスメントというと、雇用関係にある組織における上司の部下に対する言動について対象となることが多いが、この条約では、職場での職層の上下関係や雇用関係の有無に関係なく幅広く適用されることが特徴の一つである。