~新装なった横浜スタジアムに、あのカクテル光線と大観衆が戻った光景は、どれ程まばゆく映るのでしょう。今季は、これまでと味わいの違う「一期一会」が凝縮された実況になりそうです。~

 4月中旬、tvkの5月番組表に私が寄せたコラムの一部です。確かに前は向きましたが、先が見通せない迷いがありました。睡眠時間確保ができない慌ただしさのあった例年の4月に比べ、まあ、なんと時間があることか。迷ったあげく『キングダム』のコミック57巻セットまで購入してしまいました……。

ウイング席から(横浜スタジアムを)見つめる筆者 ©吉井祥博

「去年のベイスターズ戦を再放送しよう!」

 接触を避けるための球場などでの取材制限が敷かれる中、他局のアナウンサーと話しても「来るべき時のために、牙を研いでおくしかない」という結論に。

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 いや、それでも野球を愛する人のために何かを発信したいという思いで、実況担当アナウンサーによるYou Tube動画配信を立ち上げた矢先、「去年のベイスターズ戦を再放送しよう!」という案が浮上しました。当初、営業面での打開策としての要素が大きく「結果が分かっている中継なんて、さして面白くない」という意見も受けました。

 ですが、せっかく放送するならtvkらしく、どこまでも楽しく、ただし予算は少ないので格好は二の次。

「リモートでゲストをお招きし、横浜スタジアムのスタンドにいる気分で好きに語り合おう」
「Twitterを利用してテレビの前の方々の声を、これでもか、というくらい反映しよう」
「じっくり野球を見ていただく時間と、にぎやかにポジティブに楽しむ時間、メリハリをつける。過去の実況を生かす部分と音声を新たに付ける部分を両方!」

 無理難題を含むアイディアに対して、ディレクターはもちろん広報、技術担当者が加速度的に呼応し、次々と実現。皆それぞれの立場で閉塞感の中、エネルギー発揮の場を探っていたのかもしれません。生き生きとしています。この時点で「良い番組になるかも」という予感がありました。

 毎年末に放送している、シーズンを振り返る特番やトークショーを通して、ファンの人達の温度と空気感を知りました。ベイスターズ ファンは痛みや厳しさを胸にしまいながら、どこまでも前向きで、人に優しく、野球そのものと仲間を大切にする人達が、なんと多いことか。だからこそ、寂しい思いをしている時期に自宅で底抜けに楽しんで欲しかったのです。

岡村帆奈美と筆者 ©吉井祥博

 番組の立ち上げでは、tvk年末特番でもおなじみの村瀬秀信さん、吉川正洋さんをゲストに迎え「ちょっと、大丈夫?」というレベルまでポジティブな言葉をふんだんに盛り込み、マニアックな話題にも没頭。

 一方、事前の中継準備は、今現在、当時、さらに過去とチーム状況や選手個々について3つの時間軸で行うため、想像以上に手間がかかりました。実際の放送でもしばしば表現が混乱し「時をかける実況」に……。

 4月28日の放送から全16回、疲れ知らずの完走。5月までは2019年シーズンのプレイバック、6月は2015〜2018年の中からもお送りしました。

 ゲストには、齊藤明雄さん、野村弘樹さん、森本稀哲さん、須田幸太さん、荒波翔さん、さらにはサンケイスポーツ記者の湯浅大さんも登場。自宅からの出演のため時々ご家族まで高いテンションの世界へと巻き込み、野球の魅力を存分に語っていただきました。

 担当アナウンサーは精鋭?(人数が少ないので皆、この表現です、すみません)5名。私の他には、Twitter全国トレンド1位放送を導いた根岸佑輔。野球を伝えるためアナウンサーになり夢を叶えた岡村帆奈美。笑顔と涙とビールが似合うTwitter女王、瀬村奈月。苗字の赤を青に変える覚悟を決めた赤井祐紀。全員、心から中継を楽しみました。

根岸佑輔と瀬村奈月 ©吉井祥博