100年に1度の国難と言われるコロナ危機によって、「ポスト安倍」人気に異変が起きた。文春オンラインで行った読者アンケートの結果、吉村洋文府知事、小池百合子都知事をはじめ、首長たちが支持を広げる一方、現職国会議員の票が伸び悩んだ。
遅くとも来年の秋には行われる自民党総裁選。これから「ポスト安倍」レースはどうなるのか。石破茂氏ら有力候補が首相の座につくための条件とは? 政治ジャーナリストの後藤謙次氏に聞いた。(全4回の3回目/#1、#2、#4も公開中)
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なぜ吉村・小池・鈴木に多くの票が集まったのか?
まず指摘できるのは、安倍首相の「地盤沈下」です。
安倍首相(4選)は昨年末からグッと支持を落として、3位。これは7年半という長期政権からくる“飽き”が最大の要因でしょう。
加えてここまでのコロナ対策に関しては、安倍首相の“失政”と言ってもよい対応が目につき、リーダーシップに大きな疑問符がついてしまいました。
そして「ポスト安倍」人気1位は変わらず石破茂氏です。ただし安倍首相の落ち込みを見ると、石破氏の伸びもそれほどではない。安倍首相は昨年から100票弱下がっています。そうであれば石破氏は400票を超える数字になっていないと差引勘定が合わない。
これは“後継者難”という現実の反映でしょう。「いまの安倍政権には変わって欲しい」、けれども「具体的に自民党に後継者がいない」。だからこそ実際は「ポスト安倍」“有資格者”とはいえない吉村洋文(2位)、小池百合子(5位)、鈴木直道(8位)各知事、そして山本太郎氏(7位)に票が集まったのでしょう。
安倍首相の減点ポイントは「発信力」
政権を担うリーダーはこういう危機の際はむしろ“強くなる”ものです。ドイツのメルケル首相は支持率が一時80%に達し、多数の感染者・死者を出したイタリア・コンテ首相ですら支持を伸ばしました。
特に安倍首相にとって減点の対象となったのは、危機における「発信力」です。
2月下旬に新型コロナが本格化してから、安倍首相の口から国民の心に届く言葉があったか、と問われても、ほとんど記憶にないのではないでしょうか。
NHK、民放各局がテレビ中継する首相会見も何度も行われました。そもそも首相会見は視聴率もひとケタの下の方でテレビ局にとって“消化試合”のような位置づけです。しかしコロナ危機では国民の関心が集中。たとえば2月末の会見ではNHK総合で15%を超える視聴率を記録しました。
ところが当の安倍首相はプロンプターを見て、官僚の書いた原稿を“朗読”する。プロンプターは左右に置かれているため、真正面を向く機会が極端に少ないのが印象的です。