悔しい、と思ったそのあとに
もちろん加害に対しては徹底的に無視したり、反論したりなどその場で直接抗議することもできますし、そうした抵抗には正当性があります。嫌がらせを受けているのだから、可能であれば強く出て相手を黙らせてもいいはずです。
しかし私を含めて、その場で強く抗議することができない女性も多くいるでしょう。上記のような機関はそういった人のために存在しているはずですから、問い合わせをすることに気後れする必要はないと思います。
上記の情報を調べていたとき、「人権侵害の被害者救済」の文字列を見てはっとしましたが、大げさでもなんでもなく、確かにあれは人権を侵害された体験だったのだと、ようやく自覚することができました。
見ず知らずの女性に対して、服装へのしつこい言及や性的なからかいをすることは「性的嫌がらせ」だし、場合によっては「侮辱行為」にもあたります。なんの脈絡もなく、運転手と乗客という関係性を利用して、女性が怖がるのをわかった上で「タクシー運転手が乗客の女性を殺害した事件」を連想させるように話すことは明らかに「脅迫行為」です。
これらの加害行為をただ「失礼な態度」といった言葉で終わらせて、被害者自身が無理矢理に自分を納得させる必要はないはずだと、私は思います。
また同じような目に遭ったとしても、いまの私には、直接彼らに抗議するだけの勇気はないかもしれません。でも、身の安全を確保しながらなら、感情を整理してからなら、声をあげることは不可能ではないし、何か変わる可能性があるのならそうしたいと思っています。
会話を録音しておくことも効果的
上記の相談窓口に問い合わせをするにしても、ドライバーがどこの会社の誰なのかがわからなければ対応してもらいようがありません。しかしタクシーの車内には、ドライバーが会社名と顔、名前をはっきりと表示しています。だから、もしもハラスメントやなんらかの被害に遭ったら、まずはしっかりと会社名と名前をメモしておくこと。そうすれば「あとでいつでも報告できる」と自分を安心させられるし、何も太刀打ちできないまま自信を失ってしまうことも防げます。
また、会話を録音しておくことも非常に効果的です。私はライターという仕事柄、重要な会話をするときは必ずスマートフォンで録音する癖がありますが、問題が発生したときに録音データが証拠となって助けられた経験が何度かありました。「言った、言わない」になる前に、こうした証拠を持っておくと報告をスムーズに行うことができるのでオススメです。
この原稿を執筆中にも、乗り込んだタクシーで「ありえない対応」を取られたばかりです。録音は間に合わなかったけれど、降りる前に会社名と名前はしっかりとメモを取ることができたことは少しだけ自信につながったように思います。
誰かから人権を侵害されたとき、自分には当然声をあげる権利があること。小さな自信を積み重ねて、「自分の行動には何かを変える効果がある」と自分自身が思えるようになること。そうすれば、私は今よりも生きやすい未来を切り開けるのではないか。最近は、そんなふうに考えています。