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 金与正氏の談話は、爆破前日に出された文氏による南北共同宣言20周年のビデオメッセージを非難したもので、まず、「その内容を聞くと嫌悪感を禁じ得ない」とした上で、「水を飲んで胃もたれするような言いぐさのような鉄面皮で図々しい内容ばかりくどくど並べ立てた」と言いたい放題だ。

爆破翌日に口にした「金与正の毒舌語録」

 さらに、文氏を「南朝鮮当局者」「大統領」と呼んで、畳みかけるように非難した。

「南朝鮮当局者の演説を聞くと、我知らず吐き気を催した」
「南朝鮮当局者は何を誤ったのかを認めることもせず、目クソほどの反省もない」
「図々しさと醜悪さが南朝鮮を代表する最高授権者の演説に垣間見えた」
「漠然とした期待と残念さごときを吐露するのが『国家元首』が取る姿勢と立場なのか」

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第3回日朝首脳会談の際に笑顔を見せる金与正氏 ©AFLO

「一言一言に鉄面皮さと図々しさが不快な臭気とともに感じられる詭弁というべき」
「問題はドブに落ちてもがいているこの瞬間まで、南朝鮮当局者が外部勢力のズボンの股を放すことができない(筆者注:米国から離れられない)と言ってだらしない姿を見せていることである」
「表面上、正常に見える人が精神はおかしくなっているのではないかと心配になる」

 以上が、娘ほど年の違う与正氏から、文在寅大統領に向けて発せられた暴言である。1つの談話に、これほどたくさんの汚い言葉をよく入れられたものだ。文大統領にとっては、恩をアダで返されたようなものだろう。

 それまで、北朝鮮への刺激を避けていた韓国大統領府も、さすがにこの談話は見過ごせなかった。

 韓国大統領府は金与正氏の談話について同日に即刻、「非常に無礼な語調で、あしざまにけなし、非常識だ」と反発。「南北首脳間の信頼を根本的に損なうもので、北の分別をわきまえない言動にこれ以上我慢しないことを明白に警告する」と表明した。さらに、連絡事務所の爆破などについて「すべての事態の結果は全面的に北側が責任を負わねばならない」「基本的な礼儀を守るように」と警告した。

 こうした韓国大統領府の反発をあざ笑うかのように、北朝鮮は国営メディアを通してその後も連日、韓国への非難や罵倒を繰り返し、次の挑発行為をちらつかせている。

 簡潔に言えば、南北和解・協力にこだわり「平和と共存のための努力を妨げてはならない」と訴えた文氏は、北朝鮮から完全に足元を見られているのだ。それを北朝鮮は今回、行動で示しただけだ。