この期に及んで対話に期待する文大統領
なぜ、北朝鮮はここまで文在寅大統領に悪罵の数々を投げつけられるのだろうか。それは、なめられ、なじられ、北朝鮮から完全に面子をつぶされた文氏が、それでも北朝鮮との対話は諦めないと思っているからだ。
文氏は金与正談話が発表された17日には早速、外交関係閣僚経験者との懇談会で「忍耐し、対話によって問題を解決したい」と語ったという。
北朝鮮が挑発を連発し、2000年の6・15南北共同宣言以前の緊張状態に戻そうとしているこの期に及んでも、我慢して北朝鮮と対話をするのだという。文氏には、これまでの対北政策を放棄し方針を変える気はない。
もちろん、韓国国内では保守系野党から「文政権の対北政策が間違っていたことが証明された」とし、文氏に方針の変換を求める声が強まっている。左派の与党内部からさえも「政府の政策が間違っていた」と自省する意見が出ている。一般国民は、北朝鮮の暴挙に批判的なかたわら、北朝鮮に今回も裏切られた文政権を冷ややかに見ているようだ。
それでも文氏は北朝鮮との対話を諦めない。文氏にとって幸い、4月の総選挙で左派系与党「共に民主党」が歴史的な圧勝を収めたことで、どうにか政権運営を維持できそうな状況にある。
北朝鮮の挑発にも関わらず、脱北者団体は朝鮮戦争勃発70年に当たる6月25日に、北朝鮮に向け金正恩政権を批判するビラを散布する計画だ。韓国政府はこの散布を阻止し、法的な対処方針も表明した。韓国はまた弱腰を見せてしまった。
こうした韓国内部の状況を北朝鮮が注視している。その上で、韓国に対し、次の一手を下すタイミングを計っている。文政権が北朝鮮の主張を聞き入れる限り、文在寅大統領は北朝鮮に利用され続けることになるだろう。