5月9日に放映されたNHKスペシャル「ふり向かずに 前へ 池江璃花子 19歳」。406日ぶりにプールに入った場面など、白血病からの復活を目指す池江の「ありのままの姿」を映した同番組は、大きな反響を呼んだ。
今回、退院後の池江に密着してきたNHKのディレクター・宮内亮吉氏が「文藝春秋」7月号で、番組では描ききれなかった彼女の素顔を明かした。
「エイズを打ち明ける場面で泣きました」
“東京五輪のヒロイン”と目されていた池江が、急性リンパ性白血病を公表したのは昨年2月のことだった。抗がん剤の副作用で髪は抜け、症状は一進一退を繰り返す日々。9月には造血幹細胞移植を受け、その後、連日のように40度を超える発熱と激しい頭痛に悩まされた。
過酷な闘病生活が続くなかで、池江が大きな影響を受けた映画があるという。
彼女がその映画についておもむろに語り出したのは、宮内氏が密着取材を始めて間もない頃だった。
〈「クイーンの『ボヘミアン・ラプソディ』見た人? めっちゃ良くなかったですか? 私、DVDも買いました。この前WOWOWでやってたので、それも見たんです」〉
「ボヘミアン・ラプソディ」は、クイーンのボーカル、フレディ・マーキュリーの伝記映画。フレディは1987年にエイズ感染が発覚し、91年、45歳の若さでこの世を去った。昨年4月にDVD化されている。
〈――見ましたよ。良かった。でもクイーンなんて知らなかったでしょ。
「知らなかったです。ずっと一生懸命やってきたのに、病気で亡くなるなんてすごく辛いだろうなって。他の人には何も言わないで過ごしていた。すごく強いなって。バンドの仲間に、エイズを打ち明ける場面で泣きました。ライブしている途中でも泣いた。本当にかっこよすぎて」
白血病は決して治らない病気ではない。それでも先の見えない闘病生活の中、早逝したフレディの人生に自身を重ね合わせていたのだろう〉