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2020/06/25

「そうだよ、ジュリーがいたじゃないか!」

 そして彼の存在はもちろん、俳優としての非凡な才能までも失ったこと、山田洋次監督とのタッグを組むはずだった主演映画『キネマの神様』でそれを発揮できなくなった悲しみ、悔しさ、寂しさに襲われる。「エール」第25話(5月1日放送)、第28話(5月6日放送)、第34話(5月14日放送)……と、志村の出演回を見るたび、回を重ねるごとにその想いは増幅する一方だった。ましてや、こちらは東村山在住者だけにどうしたって志村の顔が頭に浮かんでしまうのだからたまらない。

 そんななかでハッとしてグッときた唯一の出来事が、『キネマの神様』の主演を志村に代わって沢田研二が務めるというニュースだった。当初は「志村の代わりなんていない。代役なんか立てて撮ったりしないでくれよ」と考えていたが、沢田研二登板の報には「そうだよ、ジュリーがいたじゃないか!」と大納得&大満足でバシバシと膝を打った。ひとまず山田洋次監督の“わかっている”采配に感謝せねばと、松竹の本社がある東銀座に向かって深々と頭を下げた。

沢田研二

志村とジュリーの“鏡コント”

 志村とジュリー。世代によっては縁もゆかりもないコンビに思えるかもしれないが、40代後半以降の者にとっては切っても切り離せない間柄で、“加トちゃんケンちゃん”“志村と田代”と並ぶ名コンビなのだ。「サムライ」「ダーリング」「カサブランカ・ダンディ」「TOKIO」といったヒット曲を連発させながら、「8時だョ!全員集合」「ドリフ大爆笑」で志村の付き人に扮する“付き人コント”や志村を妻に迎える“夫婦コント”、さらには加藤茶とのトリオで“ヒゲダンス”をノリノリでやってくれるジュリーは、カッコいいのに面白いスーパースターだったのだ。で、このふたりといえば“鏡コント”に尽きるだろう。

映画『キネマの神様』公式アカウントより

 

 舞台は楽屋。ジュリー扮するスター(志村がスターに扮するバージョンもあり)が大きな鏡の前を通ると、同じ格好をした志村が鏡の向こうに現れる。お互いに「ウン?」という顔をしてから、ラジオ体操をしたり、ボールをバウンドさせたり、傘を開いたりするが、鏡の向こうの志村は動作がズレていたり、ボールがぜんぜん弾まなかったり、なんだかおかしい。容姿も似ている気もするが、よく見ると志村はジュリーとは手足の長さも違うし、どう考えても顔の造作が違うというわけで観ているこちらは大爆笑という内容。

©文藝春秋

 このコントのおかげで志村とジュリーは“似てないようで、やっぱり似ている”コンビとして我々の心に刻まれているし、ふたりが鏡を挟んで今回の再キャスティングを「まかせたよ」「まかせとけ」と言い合っているような気にもなってジ~ンとしてしまうのである。