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2020/06/25

大名優でもあるジュリー

 もうひとつ言うならば、ジュリーは大名優でもある。三億円事件の犯人を演じた「悪魔のようなあいつ」(75)、原爆を作って日本政府を脅迫する『太陽を盗んだ男』(79)、天草四郎となって真田広之との妖しいキス・シーンを見せつけた『魔界転生』(81)など、日本映画&テレビドラマ史に残る名作に主演。

 タッグを組んだ監督も藤田敏八(『炎の肖像』(74)、『リボルバー』(88))、長谷川和彦(『太陽を盗んだ男』)、深作欣二(『魔界転生』)、森田芳光(『ときめきに死す』(84))、鈴木清順(『カポネ大いに泣く』(85)、『夢二』(91))と名匠ばかりで、山田洋次監督とは『男はつらいよ 花も嵐も寅次郎』(82)ですでに手合わせ済みで、あの大島渚からは『戦場のメリークリスマス』(83)で坂本龍一が演じたヨノイ大尉役を熱望されていたほど(ツアーがあったために実現ならず)。ホラー『ヒルコ 妖怪ハンター』(91)やミュージカル・コメディ『カタクリ家の幸福』(01)でも主演を張っており、存在感を薄めることなくどんなジャンルでもハマることができる“振り幅”の大きさも半端ではない。

田中裕子 ©文藝春秋

 また、妻の田中裕子と夫婦漫才師を演じた『大阪物語』(99)では年下の女性を妊娠させて家から追い出されるもなに食わぬ顔で数軒先に新居を構える男、『幸福のスイッチ』(06)では田舎町の小さな電器屋の主人といった具合にダメなオヤジも普通のオヤジも演じ、それぞれでシンミリとさせてくれた。

『キネマの神様』でジュリーが演じる主人公のゴウは、ギャンブル中毒で家族に見放されているダメなオヤジという設定。まったくもって不足のないキャスティングだ。

共通するプライドとストイックさ

 さらに、2004年と2018年のライブ公演で“観客数が見込みより少ない”という理由でライブ公演をキャンセルし、単なる困ったオヤジのような扱いで報道されたことも踏まえての起用であるならば、改めて山田洋次監督の采配には頭が下がる。

山田洋次監督 ©文藝春秋

 でもこの公演キャンセルに関しては、「客席がスカスカの状態でやるのは酷。僕にも意地がある」という当時のコメント(2018年10月)から、稀代のスターの活躍を知る者としてアーティストのプライドとストイックさを感じて妙に嬉しかったし、ああいった報道になんだか違和感を覚えた。

 志村も笑いに妥協することがなかったし、「エール」の収録ではボロボロになるまで台本を読み込むなどストイックな姿勢で臨んでいたと報道されていた。そんな意味でも志村とジュリーは似てないようで、やっぱり似ているふたりだったし、志村の代わりを務められるのはジュリーしかいないのだ。

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