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代理人が教える、“優良外国人選手”と“ダメ外国人”を分ける条件

文春野球コラム ペナントレース2020

2020/07/05
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二軍に落ちたとき、外国人選手の真価が問われる

 ニールは来日1年目の昨季、12勝1敗という成績を残しました。僕自身、これほどの活躍を予想していたわけではありません。そんなことはニールだけでなく、どの選手についても思ったことがないです。

 今まで「この選手は絶対日本で活躍するな」と思った選手のトップ5を振り返っても、半分くらいは思うような成績を残せていません。逆に「どうだろう?」と思っていた選手が、すごく活躍した例もあります。日本で活躍するかどうか、どんな選手でも実際に来てみないと未知数な部分が多いです。

 ただし、一つだけ確実に言えることがあります。どの球団の外国人選手も、数十人の候補者の中から渉外担当や駐米スカウト、GMなど多くの人がチェックし、契約に至った「1人」だということです。そうして日本に来ている外国人選手なので、全員、日本で活躍する能力を持っています。

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 ところがシーズン序盤で結果が出ないと、現場から「ダメ外国人」と言われる。球団の上の人は他チームで活躍する選手を見て、「うちはなんでああいうのを獲れなかったんだ?」となる。挙げ句、「新しい外国人を獲れ」となる場合もあります。

 日本のレベルは高いだけに、外国人選手が適応するのは簡単ではありません。球団がやるべきことは、自分たちが獲得した選手が活躍できるように、まずはいろいろな努力をすることです。そうでないと、投資が無駄になってしまいます。

 ニールの場合、キャンプ中にハムストリングのケガで下半身ができていないままシーズンに入りました。難しかったのは、来日2戦目で地方球場(県営大宮)での登板が回ってきたことです。「契約条件で、これから地方球場はやめてくれ」と冗談で言っていました(笑)。日本の環境に慣れていない選手にとって、2試合目に地方球場で投げるのは難しいものがあります。

 結局、4月は4試合に先発して結果が出ず、二軍に落ちました。正直、「球団はこの後、チャンスをくれるのだろうか?」と思いましたね。外国人選手には日本の野球に慣れる時間が不可欠なので、初めの数試合の印象だけで、以降チャンスが来なくなるのはおかしい。ましてや「二軍で結果が出ていないからダメだ」と言われる選手がいますが、それも不思議な話です。日本の若手選手にとって二軍は結果を残してアピールする場だと思いますが、外国人選手には日本に慣れていく機会です。それなのに「二軍で結果が出ないから」とチャンスをもらえなくなり、埋もれている外国人選手がどの球団にもたくさんいるのが実際のところです。

 外国人選手の立場から言えば、真価が問われるのは二軍に落ちた後です。「なんで俺が二軍なんだよ」とか、「デイゲームで朝早くから行きたくない」とか、「グラウンドの質が低い」など、文句をつけるところはたくさんあります。

 でもニールは文句を言わず、逆にチャンスと捉えました。下半身ができていなかったから、もう1回つくり直そうとなった。日本の野球に慣れていく上で、客観的に自分を見られたと思います。

 同時に重要なのは、コーチの対応です。二軍に落ちた選手がピリピリした感じになると、腫物に触るような対応をするコーチがいるんですね。一軍も含め、外国人選手がうまく行かなかった場合の引き出しを持っているコーチが非常に少ないように感じます。メジャーにトライした経験のあるコーチなら、コミュニケーションの取り方など引き出しを持っています。残念ながら日本には、外国人選手がうまくいっていないときに「自分が支えてなんとかしてやろう」というタイプのコーチが本当に少ないです。

 逆にそういうコーチがいると、次へのきっかけをもらって成功していきます。そういう意味で、ニールは二軍で意味のある時間をすごすことができました。ライオンズに入って本当に良かったと思いますね。

お金以上に大事なこと

 1年契約で来日したニールは昨季終了後、ライオンズと契約延長しました。

 日本に来る外国人選手にはアダム・ジョーンズ(オリックス)など一部を除き、1億円単位で給料をもらったことのない選手がたくさんいます。ニールもそうでした。

 それが去年活躍したことで、交渉上、初めて自分の要求をできる立場になりました。本人からすれば、そういったお金を得られるのは人生で数少ないチャンス。もしかしたら、最初で最後かもしれません。実際、すべての手を尽くして条件を上げるという選手も当然います。

 でもニールに変な欲はなく、「ライオンズに残りたい」という気持ちが純粋に強くありました。二遊間の源田壮亮、外崎修汰を筆頭にライオンズは内野手の守備力が非常に高く、だからこそグラウンドボーラーの自分は来日1年目から活躍することができたと何度も話していました。そうしたニールの残留したいという気持ちにライオンズも応えてくれて、契約延長することができました。

 代理人とすれば「細かい条件をもう少し良くできるのでは?」と考えるものですが、ニールは「自分の希望はライオンズに残ることだ」と何十回も言ってきました。「この条件で満足している」と、私が説得されたくらいです(笑)。

 ニールは奥さんも含め、来日した頃から日本に溶け込もうという気持ちが非常に強くあります。こうした考え方の持ち主だから、日本で活躍できているのだと思いますね。

構成/中島大輔

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