2020年シーズン開幕から2週間が経過し、各球団にやってきた新外国人選手の「明暗」が分かれている。
“助っ人”と言われる外国人選手はチームの浮沈を左右する存在だ。一方、日本のプロ野球は“4A”と表現されるほど高い水準にあり(※メジャーリーグ未満、3A以上という意味)、外国人が適応するのは決して簡単ではない。
「日本人選手がメジャーに行くと、『マウンドの違いは大丈夫ですか?』『ボールは滑りませんか?』とメディアの人は気にしてくれるけど、同じことを外国人選手には誰も言ってくれない。みんな、逆のアジャストを求められるんですよね」
そう語るのは、スポーツ選手のマネジメントなどを手がける米オクタゴン社でアジア担当部長を務める長谷川嘉宣氏だ。同氏は元巨人のマイルスズ・マイコラス(現カージナルス)やブライアン・ウルフ(元日本ハムなど)ら数十人の選手を担当してきた。
外国人選手の目利きである長谷川氏から見て、“優良外国人選手”と“ダメ外国人”の差はどこにあるのか。昨季西武に入団して12勝1敗、開幕投手を務めた今季まで年またぎの12連勝を続けるザック・ニールを例にとり、外国人選手はどんな経緯で日本にやってくるのか、そして活躍するために不可欠な「条件」について語ってもらった。阪神ファン、オリックスファンも必見!
最初は興味を持ってもらえなかったニール
我々の会社では、メジャーリーグとマイナーリーグを行ったり来たりしている選手や、メジャーでチャンスがなくなってきた選手、アジア向けの選手などについて、年齢も考えながら日本や韓国に売り込んでいます。
ニールを移籍リストに入れたのは2015年8月。本人は「メジャーのチャンスがなければ」という条件付きで日本でのプレーを望んでいました。
2016年にメジャーデビューしたニールはこの年、マイナーとの間で上がったり下がったりを繰り返します。転機は2017年1月、メジャーの40人枠から外れてマイナー契約に切り替わったことでした。この年もメジャーとマイナーを行き来するなか、実はライオンズではない球団が視察に来たことがあります。この時点で、ニールの名前は日本の球団に知れ渡っていました。
ただし日本の球団が特に欲しがるのは、マイコラスやバンデンハーク(ソフトバンク)のように背が高くて150km/hのストレートで押していけるピッチャーです。ニールのようなシンカーボールピッチャーは、優先順位として決して高くありません。
2018年もニールはメジャーとマイナーの間を上がったり下がったりするなか、日本の球団からなかなか興味を持ってもらえませんでした。そうしてシーズンが進んだ7月、ライオンズから「緊急補強をしないといけない」という話を聞きます。そのとき、「ザック・ニールというピッチャーがいます」という話をしました。結局ライオンズはカイル・マーティンと契約しましたが、このときの話が後につながっていきます。
「ニールは映像を見てもすごくいいし、渡辺(久信)GMと一緒に見にいく」
8月、そんな話が渉外担当からありました。駐米スカウトのケビン・ホッジスのレポートも良かったのでしょう。シーズンオフになるとすぐ、ライオンズはニールと契約してくれました。
移籍リストに名前を入れてから4年、ついに契約がまとまりました。読者の皆さんにとってこうした話を聞く機会はあまりないかもしれませんが、外国人選手の移籍にはいろいろな要素が絡み合って成立します。ニールのように「いずれアジアに行くだろうな」という選手も、実際に決まるまでには数年かかるものなのです。