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時を戻そう。明大時代の森下暢仁が部員に頭を下げたあの日

文春野球コラム ペナントレース2020

2020/07/23
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森下の謝罪から生まれ変わった明大ナイン

 女房役の西野は、森下と同じ政治経済学部。グラウンド外でもともに行動してきただけに、主将就任後の変化を敏感に感じ取っていた。

「森下は、前に出るタイプではなかったけど、練習の中での発言とかから自分がやるんだ……という気持ちが見られた。ダメなプレーがあれば、キツイ言葉を使ってでも許さない。あいつの言葉で緊張感を持つことができた。エースで主将。周りも森下だけに頼らず、みんなでやっていこうとなった。より一層チームが一つになれたかな……と思います」

 証言通り、森下の謝罪からチームは生まれ変わった。初戦の立大戦の敗戦以降、10勝1分でリーグ優勝。団結力そのままに冒頭の全日本大学野球選手権も決勝まで勝ち上がることになる。

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 決勝戦、西野は最終回のマウンドに向かおうとする森下に耳打ちした。「優勝決めたら俺が持ち上げてやるからな。この回しっかり抑えよう」。そして、大学日本一を決めた空振り三振の勝利球を手に、誰よりも速くマウンドまで走った。団結の中心となった主将兼エースに感謝を示そうと、誰よりも高く目立つように持ち上げたのだった。

 善波前監督は、昨年限りで12年間務めた明大の監督を退任した。指揮官にとっても思い出深い1年間だった。

「ラスト1年の暢仁の姿は、いい手本だった。日本一になれたのは、あの子が大きな要因。引っ張ってくれて、それを周りが支える。そのバランスでいいチームになった。暢仁が下級生のころには“もっと責任感を持て”と言ったことはあるけど、最終学年はキツく言わなかったかな」

 高卒時点でドラフト上位候補だった。それでも、大学4年間が遠回りでなかったことは、大学日本一のマウンドに集まった明大ナインの笑顔が証拠である。

河合洋介(スポーツニッポン)

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