インスタレーションというのは多くの場合、絵画や写真といった平面作品からオブジェのような立体物、さらには映像の投影などさまざまな表現方法を駆使して、場の空気を整えていこうとする。
アンジュ・ミケーレの展示の場合、絵画だけで構成されている。それでも一点ずつの存在感が絶大ゆえ、空間全体はみごとにひとつの色合いで染め抜かれた。
銀の地色をベースに、その上にマルや波形などのシンプルなかたちを描いていくのが、アンジュ・ミケーレの作風だ。モチーフとなっているのは海や山、星や月、動物に植物、鉱物などといった自然の要素。ごく限られた色とかたちだけで、これほど強烈な印象を生み出してしまうことには驚かされる。おそらくは大いなる自然の豊かさを、極限まで凝縮して絵の中に詰め込んであるからこそ、これほどのエネルギーを発するのだろう。
「円」の表現が気持ちを安らげる
アンジュ・ミケーレはヴェネツィアに生まれ、現在は京都を拠点にするアーティストである。創作はいつも自然のエレメントに触発されることで始まり、それが抽象と具象の中間にあるような磨き抜かれた形態となって、観る側の眼前に提示されることとなる。
今展で多数発表されている「circle」シリーズは、アンジュ・ミケーレの表現の真骨頂を示す。フリーハンドで手を動かしながらかたちにしていくアンジュ・
ひとりのアーティストがいくつもの作品を用いて整えた空間で、非日常の世界をしばしたゆたってみたい。