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帰納法の落とし穴

 帰納法によって誤った答えを導き出してしまう原因、それはひとえに「サンプリング」、つまり使用した情報の「選び方」にあります。

 私たちは日常的に複数の情報から「これらのことから何が言えるか?」と帰納的に答えを導き出しています。しかし当たり前ですが、世の中のすべての情報を知っているわけではありませんから、自分の「知っている情報」で考えるしかありません。

 すると、先のケースのように「Aが前々回、代打ホームランを打っている」ことを知らなかったり、または忘れていると、周囲から「誤った情報から導き出した誤った推論」、この場合は「ただの結果論」として屁理屈認定されてしまうわけです。

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 このように見落とした情報(サンプル不足)や偏った情報によって、間違った答えを導き出してしまうことを「軽率な一般化」と呼びます。

©iStock.com

 インターネットで知った根拠の定かでない偏った情報をもとに、「あの民族は」「あの国は」と決めつけている人などは、まさに軽率な一般化の専門家といえます。

 昨今の情報化社会により、私たちは帰納的論理展開の根拠となるさまざまな情報に、驚くほど手軽にアクセスできるようになりました。しかし、その反面「自分はすでに十分な情報を得ている」と勘違いして、早急で安直な結論、つまり軽率な一般化に陥ってしまうリスクも高まっていると言えます。

「感染者の中心が20代=若者のモラル低下」に隠された印象操作

 さて、この「軽率な一般化」という屁理屈を知ってもらったところで、本題の若者論です。「緊急事態宣言解除後に発表された新型コロナ感染者のボリュームゾーンが20代の若者である」というのはひとつのファクトでしょう。

 では、このたったひとつのファクトから「若者=悪」と決めつけてよいと思いますか? そこに見落としている情報はないのでしょうか?

 東京都は感染者が増加するたびに、「夜の街を中心に検査を行った結果だ」と説明してきました。もしそうであるならば、従業員のボリュームゾーンが20代・30代である夜の街由来の感染者が若者に偏るのは、ある意味当然の結果です。一方で、北海道の「昼カラ」の事例のように、夜の街以外でどれほど感染が広がっているのかは不明です。