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コロナ第2波で「若者のモラルが低下している!」と安易に語ることの愚かさ

「軽率な一般化」に惑わされないために

2020/07/04
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数字は嘘をつかないが、数字を用いて嘘をつくことは容易

 確かに今は少子化が進んでいるとはいえ、少年の人口は1960年と2008年で2倍もの差はありません。しかし、少年による凶悪犯罪の検挙者数は3倍以上です。

 むしろ、この数字に最近の「キレる老人たち」の事例を加味して、「今の老人たちは若い頃からモラルが低かった」という答えを導き出すことができるほどです。(もちろん、それも「軽率な一般化」です)

 さらに、2018年の数字を見ると、少年たちは「すごくいい子」になっているとすら言えます。

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 しかし多くの人はそうした印象を持っていません。内閣府の調査では、「少年非行が増加している」と感じている人が過半数を超えています。つまり、「事実」と私たちの抱く「イメージ」に乖離があるわけです。

 では、なぜそうしたことが起こるのでしょう?

 その大きな原因のひとつに、マスメディアによる報道があります。世の中では常に多くの事件や事故が起きていますが、何かひとつ重大な事件、事故が起こると、それに類するものがピックアップされ、過剰に報道されてしまいます。

 たとえば高齢者による自動車事故や煽り運転による事故。これは「急に増えた」わけではなく、単に「今まで報道されなかったことが、ひとつの事件をきっかけに報道されるようになった」だけです。そして、朝から晩まで同様の事件、事故が報道されることで情報が偏り、誤った推論(この場合はイメージ)が形成されてしまうのです。

©iStock.com

「若者がメインの職場で検査を行ったら、感染者も若者が中心でした」ではなく「新たに確認された新型コロナウイルス感染者の多くは20代の若者で~~」と連日耳にすれば、「若者が身勝手なせいで社会が危険に晒されている!」といった怒りや憎しみが少なからず刷り込まれていきます。

東京の人間は身勝手なのか?

 同様に、東京都の新規感染者数が連日報道されれば、「東京の人間は身勝手だ」というイメージが刷り込まれていきます。

 しかし、緊急事態宣言全面解除後の初めの週末となった5月29日(金)の人出増加率を見てみると、東京は突出して人出が減っており、新宿駅で-50.1%、渋谷センター街で-43.4%、東京丸の内は全国の観測地でもっとも少ない-65%でした。(大阪・難波は-28.8%、福岡・天神は-27.6%)※NTTドコモ「緊急事態宣言前後における全国主要都市の人口変動分析」より、数値は昨年同月比

 ここでマスメディアの批判をしたいわけではありませんが、まずはマスメディアの発信する情報にはそうした性質、ある種のバイアスがかかっていると理解し、良くも悪くもそうした報道姿勢によって世論は少なからず影響を受けるという現実は、直視する必要があります。