データをどのように読み解くのか
「若者がメインの職場で検査を行ったら、感染者も若者が中心でした」と聞けば、「まあ、そうだろうな」と思うくらいでしょう。しかし、ニュースなどのメディアで「新たに確認された新型コロナウイルス感染者の多くは20代の若者で~~」と聞くと、「若者はけしからん!」となってしまう。
それはなぜか? 少し話を広げます。
法務省が公開している少年(20歳未満)による凶悪犯罪(強盗・殺人・放火・強制性交)の検挙者数データでは、2000年が1194名、2004年が1567名、2008年が2379名となっています。さて、ではこの情報からどのような答え(帰納的推論)を導き出すことが可能でしょうか?
ここには数値のデータしかありませんが、私たちが知っている他の情報も組み合わせて考えれば、さまざまな答えを導き出すことが可能です。
たとえば「インターネットの普及によって少年たちが不適切な情報に触れることが原因のひとつだ」とか「防犯カメラの数が増えたことにより、検挙率が上がっているのでは?」など、その原因や社会的な背景を推測することが可能です。
さらに、「2020年には4000人を超えるだろう」とか「少年に対しても死刑が適用されるようになるのでは?」といった、これらの数字から今後起こり得る未来や影響を予想することもできます。
目にしているデータは適切なものなのか
他にもさまざまな帰納的推論を導き出すことが可能ですが、そのひとつとして「若者たちのモラル低下が著しい」といった「昔(自分たちが若かったころ)は良かった」的な答えを導き出すことも可能で、実際にそうした意見はよく目にします。
確かに「昔は体罰はダメとかうるさく言われなかったし、最近の若い連中は甘やかされすぎている。だから我慢を知らないし、モラルも低くなるんだ」と言われると、「まあ、それはそうかな」と思えなくもありません。
しかし、そうやって安直に相手の意見を認める前に、私たちは立ち止まって考えるべきなのです。「ところで、この前後のデータはどうなっているのだろう?」と。
その前後のデータを調べると、なんと1960年の検挙者数は8212名、2018年の検挙者数は549名となっています。最初3つの数字だけで導き出した「昔は良かった。今は年々、少年が凶悪化している」という答えは、新たな情報を加えたことで成立しなくなってしまいました。