「美人局にしても、別のシノギにしてもヤクザの“恐ろしさ”を見せつけることになる。これは今となっては利口ではない。はるかに前からヤクザは『脅し』ではなく、『だまし』で稼ぐようになった」(同前)
この言葉を裏付ける警察庁の統計データがある。暴力団関係者による恐喝事件の摘発人数は、2015年までは年1000人以上で推移していたが、2016年以降は減少の一途をたどり、2019年には約600人となった。一方、特殊詐欺については、2015年には826人にまで増加。2019年は527人となったが高止まりしている。
警察庁は暴力団の資金について、「覚醒剤」「賭博」「ノミ行為」、そして「恐喝」の4種類を「伝統的資金獲得犯罪」と位置付けているが、将来的には特殊詐欺も常習的な資金獲得犯罪として検討の必要性がありそうだ。
長野では女性めぐり射殺事件も発生
ヤクザと女性をめぐる理不尽な事件が最近も発生している。
メイドカフェ店長への恐喝未遂事件の1カ月前となる5月、長野県坂城町の長閑な地域とは似ても似つかない、凶悪な銃声が鳴り響いた。
現場の住宅では、男女3人が倒れているのが発見され、いずれも死亡が確認された。死亡したのは、この家に住む男性(55)の長女(22)と次男(16)、そして、この住宅に押し入った指定暴力団山口組系幹部の男(35)だった。
警察の調べでは、幹部の男はベンツでこの住宅に乗りつけて窓ガラスを割って押し入り、直後に長女と次男を射殺。自分もこめかみを撃って自殺したとみられている。
幹部の男は、自分の元妻をめぐり、この住宅の長男とトラブルになっていた。報道によると、幹部の男は、「美魔女」と評判だった30代後半の妻A子さんを溺愛していたが離婚。この住宅の長男は、A子さんと職場の同僚だったという。
銃撃事件の2日前には、長男とA子さんの関係を疑った幹部の男が、長男に殴る蹴るの暴行を加える事件も発生していて、傷害容疑で逮捕状も出ていた。
A子さんとの関係を疑われた長男は、再び襲撃されることを恐れて自宅を離れていた。しかし幹部の男は、まだ高校に入学したばかりの次男ら、全く無関係の家族を射殺した上で自殺するという、卑劣極まりない事件を引き起こしてしまったのだ。