「おい!こらっ!」「この野郎!」
新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、「東京アラート」が発令中だった6月上旬の深夜、国内最大の繁華街である新宿・歌舞伎町で怒号が飛び交った。
その乱闘の様子を捉えた動画が流出し、話題となった「スカウト狩り」だ。キャバクラをはじめとした「夜の店」に女性を紹介するスカウトの男たちが、暴力団関係者とみられる集団に追いかけられる姿が、動画には写っていた。
事態を重く見た警視庁は、すでに新宿署に捜査本部を設置した。捜査の展開次第では、次の局面を迎えることにもなりそうだ。
怒号飛び交う深夜の歌舞伎町
この騒動が起きたのは、多くの飲食店が軒を並べる歌舞伎町の「区役所通」。スカウトを見つけた暴力団関係者とみられる男たちが殴る蹴るの暴力を繰り広げた。現場では怒号が響き、スカウトを追いかけ回し取り囲む男たちは次第に増え続け、100人ほどに膨れ上がった。
こうした騒動は区役所通だけでなく、6月上旬以降も歌舞伎町の各所で発生している。暴力団関係者の男たちが十数人で歌舞伎町を練り歩き、スカウトを見つけては取り囲んで暴力を加えた。
暴力団関係者が問題にしているのは、歌舞伎町でも最大規模のスカウト会社Aだ。A社は、歌舞伎町で10年以上にわたりキャバクラやガールズバー、クラブなど、接待を伴ういわゆる「夜の街」の飲食店に若い女性を紹介し、巨額の利益を得てきた。飲食店だけでなく紹介先には風俗店もあり、A社には数百人のスカウトが所属し、歌舞伎町で若い女性に声をかけ続けていたという。
歌舞伎町の飲食店業界に詳しい関係者の男性が、最近のスカウト事情について明かす。
「歌舞伎町には夜の街で稼ごうとする若い女性が、首都圏だけでなく地方などから多くやってくる。それをスカウトが待ち構えて声をかけてキャバクラなどに紹介する。銀座の高級クラブのホステスではないので、知性や教養が備わっているかどうかなんて関係ない。要するに美人だったらそれでよし。客はたくさん付いてくれる」
これまでスカウトは、かなり旨みのある商売だったようだ。
「キャバクラ店とスカウト会社の間の取り決めによって違いはあるが、紹介した女の子が働いている限り、その子が稼いだ売り上げのうち、ある店では3%、別の店では5%などと個別の取り決めで紹介料がスカウト会社に自動的に入ることになっている。これは『スカウトバック』というシステム。かなりの儲けになるいい商売だ。