東京・秋葉原の「メイドカフェ」で、メイドら従業員12人が新型コロナウイルスに感染していたことが7月8日までに明らかになった。千代田保健所(東京都)などは、店舗内の休憩室や事務室などで感染が広がったとみているという。

「文春オンライン」では3月の段階で、秋葉原のメイドカフェの新型コロナウイルス対策の実態について報じていた。今回の感染拡大を受けて、記事を再公開する。(初出2020年3月6日)

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 オタクの聖地、東京・秋葉原。その中心部にある中央通りの路地裏には、たくさんのメイドやコスプレ少女がビラ巻きや客引きをする通称「メイド通り」がある。

 新型コロナウイルスの感染拡大が伝えられた3月上旬も寒空の下、メイドの少女たちは暖かそうには見えないメイド服姿で、客となる“ご主人様”に声をかけていた。

©文藝春秋

 秋葉原文化の象徴「メイドカフェ」は、観光スポットとしても、外国人観光客、なかでも中国人に人気がある。新型コロナの感染拡大で中国人観光客が激減しているが、どんな影響を受けているのか。

「高校休校」で急遽出勤するメイドのために

 小さな古い雑居ビル内にあるメイドカフェ「A」。店内に足を踏み入れると、5、6人の客がテーブルに散らばり、メイドが接客中だった。

 部屋の片隅のテーブルには、30代くらいの男性客2人の相手をするメイドの姿があった。客の男性らはメイドと「黒ひげ危機一発」などのゲームを楽しみながら、生クリームをふんだんにつかったカラフルなスイーツを食し、ドリンクを飲んでくつろいでいた。

「現実を忘れさせてくれる、この店の空気が好きなんです」と満足げに話すのは、常連客の一人。店を一歩出れば、街を行く人々はみなマスク姿だが、ここではメイドも常連客もマスクをしていない。

©文藝春秋

 いつもはどんな質問にも笑顔で答えるメイドも、客足について話が及ぶと、目は決して笑っていなかった。

「常連さんは変わらず来てくれていますが、やっぱり初めて来るお客さんは減っていますね」

 10年以上店を構え行列ができる老舗メイドカフェ「B」で働くメイドに聞いても、2月の売り上げについて打ち明けながら肩を落とした。

「これまで外国人観光客が大半でした。それこそ中国のお客さんが外国人の半分を占めていたけど、2週間前からピタリと止まりました。最近の頼りは常連のお客さん。それでなんとか保っている。

 秋葉原のメイドカフェって、ディズニーランド帰りのお客さん、それに東京ドームで野球観戦した帰りのお客さんがよく流れて来てくれるんです。でも、いまはディズニーランドも休園だし、野球も無観客試合なので困りました」