1ページ目から読む
4/4ページ目

 テイラーは開口一番、こうした事件が起こるたびに白人側の人種差別がなんども強調されるが、それは報道の無責任であると断定した。 

 武器を持たないフロイド氏を警官が殺害したこと自体は正当化できないとしながらも、フロイド氏の身長と体重を持ち出し、大柄なフロイド氏が逮捕に抵抗した結果であると主張。

 数年前に大きな社会問題となった黒人少年トレイヴォン・マーティン(17)、マイケル・ブラウン(18)殺害事件にも言及し、どちらも被害者側に非があるとした。そうした見解に番組司会者が疑問を投げ掛けると、そもそも黒人の犯罪率は白人のそれより高いと、事件の本質を意図的にはぐらかしてコメントを終えた。

ADVERTISEMENT

 ちなみに、最後に「アジア系の犯罪率は白人よりも低い」と、脈絡なくアジア系を持ち上げる一言を付け加えている。 

 テイラーは高学歴の知識層であり、口調や物腰は穏やかだ。何より日本語が流暢。しかし、ヨーロッパ諸国から入国禁止とされるほどの白人至上主義者である。そうした人物を「アメリカは白人の国だと主張しているオルト・ライト(オルタナ右翼)の重鎮」とあらかじめ紹介した上であっても、同番組のコメンテイターとして繰り返し使うTBSの意図は何なのか。 

そもそも日本は単一民族国家ではない

 日本はそもそも単一民族国家ではなく、かつ現在はテイラーが暮らしていた1960~70年代とは比べものにならないほど人種や民族が多様化している。その日本を今も単一民族国家、均質国家と信じ、ねじれた憧憬心を膨らませているのが白人至上主義者だ。 

 さらに、全ての白人至上主義者がアジアに傾倒しているわけではない。アメリカではアジア系への差別は昔からあり、コロナ禍以降は「コロナを持ち込んだ」として差別事件が急増した。そもそも白人至上主義者には移民排斥主義者も多く、アジア系も「アメリカから出て行け」の対象だ。 

 日本に誤った憧れを抱く白人至上主義者と、その白人至上主義者を識者として尊ぶ日本。このおぞましい関係を解くには、日本が移民も多い多民族国家であると、自ら世界に知らしめていくほかはないのである。