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ゴーギャン、セザンヌ、ゴッホが間近に迫る!

「親密な」と言っていいほどの距離で向かい合うと、画家の筆づかいまでよくわかる。すると彼らの息づかいもすぐそばで感じ取れるような気がしてきて不思議な気分だ。

 いったいあの人たちは、これを描きながら何を考えていたのか。どんな熱情に取り憑かれていたのだろう。そのあたりの「作者の気持ち」が、朧げに見えてくるのだ。

 たとえばセザンヌの「リンゴで世界を驚かす!」という大言壮語、これは本人からすれば本気も本気だっただろうことが、間近で絵と対峙していればすんなり伝わってくる。小さいリンゴを絵の中に存在感たっぷりに在らしめるため、ほんの筆のひと塗りまでを、ためらい考え抜きながら置くセザンヌの様子が目の前に浮かぶ。彼はかなり遅筆だったようだけど、それもよくわかる。

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ポール・セザンヌ《りんごとナプキン》

 ゴーギャンはといえば、絵と向き合うと「自分が感じたままに世界をつくり変えろ!」との彼の声が、すぐそばから聞こえてきそう。砂利道が茶色である必要はない。空が青色だなんて誰が決めたのか。道に赤を感じたなら赤く塗ればいいし、空を紫や緑色にしたってかまわない。「そう見えた」という自分を信じよ! と叫ぶ強烈な自我の存在をありありと感じる。

 ゴッホの《ひまわり》は、近づくと筆致の一つひとつが画面に激しい凹凸をつくっていることがよく見てとれる。かといって作品全体が荒々しい印象かといえばそうじゃない。むしろ黄色の緩やかなグラデーションが目に優しく、心をゆったり落ち着かせるのにぴったりである。

フィンセント・ファン・ゴッホ 《ひまわり》

 美術史に残る名画との出逢いのときを、ぜひ堪能されたし。