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ドナルド・トランプ 米大統領
「政府を閉鎖しなければならなくても、壁を建設する」

ロイター 8月23日

 バノン氏退任後の8月22日、トランプ大統領はメキシコと国境を接するアリゾナ州フェニックスでの支持者集会で演説を行った。大統領就任以来、初めての米西部訪問となる。注目されていたのは、バージニア州シャーロッツビルで起きた白人至上主義者と反対派の衝突事件に対する言葉だ。

 トランプ大統領はフェニックスでの演説で、「双方に非がある」として強い批判を浴びた15日の会見と同様、白人至上主義者団体やKKK(クー・クラックス・クラン)やネオナチに抗議した人たちも暴力的だったと非難し、以前の声明を再度読み上げた。さらに自身への批判を「メディアの責任」と断じ、お決まりのメディア批判を繰り返した。

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 フェニックス市のスタントン市長は「(シャーロッツビルの)悲惨な事件から国家が立ち直ろうとしているときに、トランプ氏が集会開催を決定したことに失望した」と声明を発表(産経新聞 8月23日)。また、ワシントン・ポストへの寄稿では「人種間の緊張にガソリンを注いで(あおって)いる」と批判した(日本経済新聞 8月23日)。オルタナ右翼の名付け親、リチャード・スペンサー氏はフェニックスでの演説を受けて、「トランプは決してオルタナ右翼を非難しない」とツイートしている(ニューズウィーク日本版 8月24日)。トランプ氏の支持率は、就任後8カ月で最低の水準まで落ち込んだ。

メキシコ大統領に「私は生きていけない」と弱音

 もう一つ、フェニックスでの演説で注目されたのが、選挙公約に掲げていたメキシコ国境の壁建設についての発言だ。これまで、まったく進展が見られなかったが、議会での予算審議を控え、壁建設の予算確保のためには、米政府機関の一部が財源不足で閉鎖されるリスクもいとわないという考えをぶち上げてみせた。バノン氏の退任を補うようなアメリカ第一主義ぶりだ。

 そもそも、トランプ大統領が掲げていた公約は、国境の壁の建設費用はメキシコ政府が負担するものとしていた。しかし、当然ながらメキシコ側は拒否。すると、トランプ大統領はメキシコのペニャニエト大統領に対してメキシコ側が費用負担を拒否するとメディアに言わないように圧力をかけていたことが判明した(時事ドットコムニュース 8月4日)。公約を何一つ実現できていないトランプ氏にとって、メキシコとの国境に壁を築くのは最後の望みだ。トランプ氏はペニャニエト氏に向かって「私は生きていけない」と弱音を吐いたという(『週刊文春』 8月31日号)。強気なのか、弱気なのか。

ホワイトハウスの執務室で電話をかけるトランプ大統領(左)とバノン首席戦略官(当時・右)©getty


ドナルド・トランプ 米大統領
「われわれは肌の色、小切手に書かれた額、政党によって定義されるわけではない。そろそろわれわれを分断する傷を癒やし、共通の価値観に基づいた新たな結束を目指す時だ」

NHK NEWS WEB 8月24日

 西部ネバダ州で行われた退役軍人の集会で演説を行ったトランプ大統領は、上記のように語り、事態の沈静化を図った。「小切手に書かれた額」というフレーズが非常にトランプ氏らしい。名演説を狙ったつもりだろうが、反響はほとんどなかった。