「北海道モデル」の副作用
欧州で最初に感染爆発が起きたイタリアで外出制限策が発せられたのは1週間以上先の3月9日。北海道はそうした欧米の前例を見ないまま中国以外で最初に対応策を迫られた地域だった。鈴木氏は「『正しい対策』と受け止めてもらえるかという不安もあった」と述懐する。
宣言後、道民や道内企業が行動を変えたことで感染者は目に見えて減り、3週間後の3月19日、専門家会議副座長の尾身茂氏(現・新型コロナウイルス感染症対策分科会会長)が「一定の効果があったと判断している」と述べるなど評価を受けたが、副作用もあったと鈴木氏はいう。
「この3月19日あたりを境に北海道はコロナ禍からいち早く抜け出した地域として全国から注目を集めるようになりました。感染防止に向けた取り組みを続けなければならないのに、北海道モデルの成功という報道を通じて、全国の国民の危機意識に影響を与えてしまったかも知れません」
知事としての真価はこれから問われる
今回のインタビューで鈴木知事と向き合った私は、ともに果断な指導力が評価された吉村洋文大阪府知事の政治姿勢や、ともにコロナ禍と闘った道教育長の死についても質問を向けた。その記事「鈴木直道北海道知事『伝える力こそリーダーの命です』」は「文藝春秋」8月号および「文藝春秋 電子版」に詳報している。
若きリーダーの指導力に注目が集まるとともに、北海道議会では「独断だ」とか「説明が足りない」といった批判が巻き起こった。鈴木知事は7月2日、道の新型コロナウイルス感染症への対応が適切だったかどうかを検証する有識者会議を設置すると表明している。
夕張市政を担った8年間で鈴木氏は、周囲と対立するよりはむしろその懐に飛び込んで行き、巻き込みながら、局面を打開する力を蓄えていった。そうした鈴木流を確立できるか。知事としてその真価が問われるのは、これからのことだろう。
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鈴木直道<北海道知事>「伝える力こそ政治家の命です」