日焼け止めを選ぶ時に注目すべき成分は?
日焼け止め効果のある成分は大きく2種類――「紫外線吸収剤」と「紫外線散乱剤」に分けられる。紫外線を吸収する「紫外線吸収剤」は、肌に自然になじむため化粧下地などにも配合されていることが多いが、紫外線を鏡のように跳ね返す「紫外線散乱剤」に比べて肌への刺激が強い。酸化亜鉛と二酸化チタンは、いずれも紫外線散乱剤。吉木医師は「日焼け止め製品を選ぶ時にはこれらの成分が含まれているか確認するといい」とアドバイスする。
しかしそれで全て安心とも言い切れない。意外と知られていないのだが、SPF値(紫外線カット効果)は、1平方センチメートルの皮膚に対して2ミリグラムの日焼け止めを塗ることを想定して測定されている。この量を顔全体に置き換えると、1回の使用量は500円玉大ほど。さらに日焼け止めは塗ってから1、2時間経つと汗と混じったり、紫外線と反応して効果が下がる可能性が高く、塗り直す必要がある。
紫外線カット効果を求めるあまりに、それほど大量の化学物質を皮膚に塗ることの影響は長期的にみて本当に大丈夫だろうか。しかも1年に数回であればまだしも、現代では毎日の習慣になっているのだ。
「皮膚が腫れ上がったり、ニキビや湿疹が出てしまったり」
「日焼け止め製品をきっかけに、肌の調子を崩す患者さんがとても多いんです」
これまで多くの肌荒れ患者を治療してきたという菅原由香子医師(菜の花皮膚科クリニック)がそう指摘する。
「皮膚が腫れ上がったり、ニキビや湿疹が出てしまったり。それも日焼け止め製品を使ってから出るようになったと気づけばいいのですが、長年使用していてじわじわと蓄積して、加齢やストレスで免疫力が落ちた時にトラブルとして表面化することもあります。
紫外線吸収剤を含む日焼け止めは、皮膚の表面で紫外線とぶつかることで多少なりとも活性酸素が発生します。肌は紫外線にあたると炎症が起き、シミなどの原因になりますが、一方で日焼け止め製品によっても炎症が起きますし、肌の老化原因になるのです」
菅原医師自身は日焼け止めを一切使用せず、肌荒れを起こした患者にも勧めないという。
「日常生活では日傘、帽子、手袋で紫外線対策は十分だと私は思います。よくコンクリートの照り返しを指摘されますが、私が自分で紫外線を測定する機器で実験したところ、顔の部分に反射する紫外線はほぼありませんでした。それよりも日焼け止めを塗っているからと無防備になっているほうが、リスクが高いでしょう」