詳しく報じられなかったが、その間、司法省は個々の社員を追及し、刑務所に収監してきたのだ。
東証1部上場の自動車部品メーカーは7800万ドルの罰金を支払った後、担当部長をはじめ社員6人に禁固12カ月~16カ月の有罪判決が下っている。
「ターゲットにされるとなす術がない」
日本では、企業がカルテルに問われた時に社員まで収監されることはない。しかしアメリカ司法省は、個々の社員を追及して収監するほうが効果的だと考えはじめたという。現場の社員を逮捕して収監可能性を見せれば、経営陣へのプレッシャーが高まり、企業として罰金の支払いに応じる、と。
「業界団体の会合とか同業他社との親睦ゴルフに参加しただけで、価格を調整したと追及された人たちもいますが、ターゲットにされるとなす術がない。事情聴取で、『有罪を認めれば待遇のいい刑務所を選べるが、認めなければ量刑が重くなり、刑務所も選べない』と迫られた人もいる。有罪を認めて司法取引をして、できるだけ短い期間の収監を選ばざるを得ません」(カルテル問題に詳しい都内の弁護士)
こうして収監された日本のサラリーマンは30人を超えている。
「カルテルの場合、凶悪犯と一緒に収監されることはほぼありませんが、中には収監されて精神的にやられてしまう人もいる。収監された人を数人知っていますが、最前線で働く真面目なサラリーマンです」(同)
起訴されたままだと海外に行けない
収監される他に「起訴されたまま」という社員もいる。
駐在を終えてすでに帰国していたり、日本国内で勤務していた時に捜査対象になった社員の多くは、わざわざ渡米して司法省の事情聴取に応じない。司法省は業を煮やし、こうした社員を起訴しはじめたためだ。
大手電機メーカー系企業は、発電機等のカルテルに問われて1億9500万ドルの罰金を払ったが、それで終わらず、1年後に社員4人が起訴された。そのうち1人は7カ月後に司法取引が成立して禁固15カ月の判決が下ったが、残り3名は起訴されたままだ。
「アメリカへ行って出廷しなければ裁判は開かれないため、出廷しない人もいます。しかしアメリカから見れば海外逃亡であり、時効の進行が停止されるため、永遠に起訴されたままになる」(同)
その場合、アメリカに行くことはもちろん、出国先で逮捕される可能性があるため海外に行けなくなる。