7月15日朝7時36分、赤木雅子さん(49)からLINEが届いた。
「今の心境
夫が改ざんをしてから3年余りの間。夫を亡くす地獄のように苦しい日々を経験しました。でも今はたくさんの人に出会い応援していただき、そして助けていただき私はとても強くなりました。今日がスタートです。堂々と裁判に臨みたいと思います」
反対しても押し切られて不正な改ざんをさせられた
夫、赤木俊夫さんは、財務省近畿財務局の職員だった3年前、森友学園への国有地巨額値引きに関連する決裁文書の改ざんを上司に迫られ、反対しても押し切られて不正な改ざんをさせられた。公務員にあるまじき行為を悔いてうつ病になり、職場からの助けもないまま2年前の3月、自宅で命を絶った。大好きだったオーディオセットからコード2本を外し、自らの首と窓の手すりに結びつけて。54歳だった。
「夫は財務省に殺された!」と妻の雅子さんは感じた。改ざんと国有地値引きの真相解明を財務省に求めたが、納得できる回答や誠意ある対応はなかった。そこで夫の三回忌を終えた今年3月、改ざんのいきさつを書き遺した夫の手記を「週刊文春」誌上で公表。同時に国と、改ざんを指示したと手記で名指しされた佐川宣寿元財務省理財局長を相手に、真相解明を目指し提訴した。
その裁判がいよいよ7月15日に始まった。冒頭のLINEは裁判を目前に赤木雅子さんが心境を綴ったものだ。逆に雅子さんにはこんなLINEが届いた。
「頑張れ雅子ちゃん!負けるな雅子ちゃん!一同最後の最後まで雅子ちゃんの友達です」
俊夫さんも通っていた近所の接骨院の人たちがガッツポーズの写真とともに送ってきた。実は雅子さん、前日の夜から緊張が高まっていた。その気持ちをほぐしてくれるエールだった。
すり切れるほど肌身離さなかった国家公務員倫理カード
裁判2時間前の正午、大阪地裁近くの代理人弁護士の事務所を訪れた雅子さんに、弁護士は1枚の小さなカードを示して告げた。
「このカード、裁判で証拠に出しましょう」
それは国家公務員倫理カード。亡き俊夫さんが常にスケジュール帳に挟んでいた。内容を見て雅子さんはドンと胸を突かれる思いだった。
・国民全体の奉仕者であることを自覚し、公正に職務を執行していますか?
・職務や地位を私的利益のために用いていませんか?
・国民の疑惑や不信を招くような行為をしていませんか?
「だって、みんながこの通りにしていたら、夫は改ざんなんかしていないし、死ぬこともなかったはずじゃないですか」
カードがすり切れるほど肌身離さず、その言葉通り行動していた俊夫さんが改ざんを押しつけられ命を絶った。その不条理に胸が詰まった。