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「安倍首相、麻生大臣 私は真実が知りたいです」

 その後、裁判所に入った雅子さんは、お世話になった阪口徳雄弁護士にメールを送った。雅子さんが前の弁護士の対応に疑問を感じて相談に訪れ、夫の手記を見せた時、「あんた、一人でつらかったやろなあ」といたわってくれた。この一言で雅子さんは弁護士を変える決意をした。

「阪口先生 これから1時間で始まります。先生に出会えたことでここまで進むことができました。ありがとうございました」

「赤木さん 最初にお会いした時からみると何か非常に強くなり、自信がついてきた印象を持ちます。ご主人が支えてくれていると思います。真実は赤木さんにあるのですから、ありのままに話せば多数の人達は赤木さんの味方です。最後まで応援しますよ」

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入庁する弁護士から見た報道陣(撮影・生越照幸弁護士)

 午後2時、裁判が始まった。冒頭、雅子さんは中央の証言台に進み意見を述べた。一部を紹介する。

「決裁文書を書き換えることは犯罪です。安倍首相、麻生大臣 私は真実が知りたいです。最期の夫の顔は絶望に満ち溢れ、泣いているように見えました」

 涙で声を詰まらせながら懸命に読み続ける。最後に「裁判官の皆様にお願いがあります」と述べると、手元の書面に目を落としていた裁判長がまっすぐ雅子さんに目線を向けた。

「是非とも夫が自ら命を絶った原因と経緯が明らかになるように訴訟を進めてください。宜しくお願い致します」

陳述を終え、初めての記者会見に望む赤木雅子さん ©相澤冬樹

「そりゃあ100点ですよ。すっきりしました」

 10分間にわたる思いのこもった陳述が終わった。感想を聞くと……「向かい側に国の代理人の訟務検事が10人くらいいたけど、私がじっと見つめても誰も目を合わせなかった。逃げてますよね」。

 その後、初めての記者会見に臨んだ雅子さん。約30分にわたり質問に落ち着いて丁寧に答えていた。

「夫を助けられなかったことを悔やんでいます。せめてできることがあれば何でもやりたい。安倍政権を倒したいとか、そんな気持ちは全然ないんです。ただ夫が亡くなった真実を知りたいんです」

 こうして長い一日が終わった。裁判所を出た雅子さんに私は尋ねた。

「きょうの意見陳述と記者会見、いかがでしたか?」

「言いたいことが言えたんで満足しています」

裁判を終えて遺影を掲げる赤木雅子さん ©相澤冬樹

「100点満点で点数を付けると何点くらい?」

「そりゃあ100点ですよ。すっきりしました。でも疲れた。これから家に帰って、NHKのクローズアップ現代を見ます。一番長く取材してくれたんで、すごく楽しみです」

 にこやかに言い残して去っていった。次の裁判は10月14日。国や佐川氏がどう反論してくるのか注目だ。

私は真実が知りたい 夫が遺書で告発「森友」改ざんはなぜ?

赤木 雅子 ,相澤 冬樹

文藝春秋

2020年7月15日 発売