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キャッシュ残高は1年で「67億円」→「24億円」に

 連結キャッシュ・フロー計算書を見ればわかる通り、投資C/Fのマイナスが年々過剰になっている。しかも、財務C/Fが5年連続でプラスである。つまり、外部からの資金を新規出店にどんどん振り向けていることが窺える(※借金し、手元資金が増えると財務C/Fはプラスになる)。

連結C/Fの推移。投資C/Fのマイナスが年々過剰になる一方、財務C/Fは5年連続でプラス

 また、短期的な支払い能力を表す流動比率も50.2%と低迷している。飲食業なので、100%を割ることは珍しくはないが、前の期と比べると大幅に下落している。キャッシュ残高が67億円から24億円と、この1年で半分以下にまで減少した影響が大きい。

まさかの“取引先社長から20億円の借金”

 7月3日の発表によると、ペッパーランチ事業を投資ファンドに売却するという。遡ること1カ月前、6月1日に新会社を設立し、ペッパーランチ事業を新会社に移管したが、その時点ですでに予兆はあった。適時開示資料には「意思決定の迅速化」や「機動的な事業運営」が目的であると謳っているが、新会社の経営陣の4名は、ペッパーフードサービスの社長、副社長、専務、常勤監査役という顔ぶれ。法人を分けただけで実態は何も変わらない。単に売却しやすくために分社化したことが想定される。

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 また、新会社設立と同日に、取引先であるエスフーズの村上真之助社長から20億円の借入れを行った。この借入れの返済期日は7月末となっている。わずか2カ月という超短期の奇妙な借入れは、ペッパーランチ事業の売却収入を見越してのつなぎ融資だったのだろう。

7月3日、ペッパーランチ事業を85億円で投資ファンドに売却することを発表 ©共同通信社

 見方を変えれば、そんなわずかな期間でも資金ショートのリスクがあったとも言える。しかも、エスフーズとしてではなく、村上氏個人からの借入れというのも異例だ。銀行から融資を受けられる状況でないことはもちろん、エスフーズとしても許容できない程の貸倒れリスクがあったからと解釈することもできる。今年1月に新株予約権を発行したものの、株価の低迷で思うように権利行使が進まず、当初予定した資金を手にすることができていないことも、村上氏に頼らざるを得ないきっかけになったはずだ。

 それでもペッパーランチ事業の売却で85億~102億円の資金を手にするので、綱渡り状態の資金繰りは、これで一息つけるだろう。そして、売却益は少なくとも70億円になるというので、自己資本比率も20%ぐらいに回復すると思われる。

 それでは、ペッパーランチ事業を切り売りした後のペッパーフードサービスはどうなるのだろう。