7月17日には東京都で過去最高となる293人の新規感染者が判明するなど、第2波が懸念される新型コロナウイルスの感染拡大。ホストクラブからの感染者発生が収まらないが、彼らの店がある繁華街・歌舞伎町に程近い立地にあるのが、東京女子医科大学病院(東京都新宿区)だ。

東京・新宿区にある東京女子医科大学病院 ©文藝春秋

 夏のボーナスゼロが通告され、400名以上の看護師が退職の意思を示しているとされる中、同病院のコロナ病棟に勤務していた20代の女性看護師のAさん。

 夜型生活のホストやキャバ嬢たちは入院しても朝起きてくれず、深夜にはコンビニに買い出しを頼まれたという看護師たちの日々は前編で紹介した。しかし、彼女たちがコロナ病棟勤務をきっかけに追い詰められていったのは、病院外でも同じだった。

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家族にも、パートナーにも会えず

 Aさんは感染の可能性を危惧してパートナーとも会えず、現在に至るまで実家に帰省することもできていない。コロナ病棟に勤務したことで、親しかった友人から食事などに誘われることもなくなり、「孤独感に押し潰されそうになった」と語る。

小池都知事 ©時事通信社

「病院で隔離されて、家でも孤独感が深まり、精神的に厳しい時期もありました。電話で話す家族やパートナーの声に涙が止まりませんでした。好き勝手やって感染する人が多くいる中で、私たちはステイホームを守り、感染しないように細心の注意を払って医療業務に当たってきました。

 それなのに、さらに追い打ちを掛けるようにボーナスゼロ、特別手当なしは本当にショックでした。コロナ病棟では2週間働いて1週間休むという勤務形態で夜勤も大幅に減り、内科系の病棟にいた4月に比べて3万円以上給料が減りました。6月のお給料は税金や福利厚生など諸々を差し引かれて、支給額は20万円ほど。ここから家賃が出ていくと十数万円しか残らない。生活は苦しいです」(Aさん)

 東京女子医大では400人を超える看護師の退職希望者いるとされるが、「簡単には辞められない」と、別の20代の女性看護師のBさんは語る。

「突然いなくなる看護師がいたり、それぞれ辞め方は違います。しかし、簡単には辞められない部署も中にはあります。最初は師長に退職の意向を話して面談をするのですが、話をしても人手不足を理由に慰留されます。退職は一旦保留となり、院内のリエゾンナース(精神看護専門看護師)のカウンセリングを紹介され、その後、産業医に診てもらうという看護師もいます。中には病んだふりをして診断書を出してもらって辞める看護師もいました。普通の会社みたいに退職届を出して終わりとはいかないんです」