「三越伊勢丹の首都圏6店舗は、5月30日、52日ぶりに営業を再開しました。新型コロナウイルスに対する、東京都など7都府県に緊急事態宣言が発令された4月7日の翌日から休業に入って、2カ月弱。おかげさまで、再開後の1カ月は、想像以上に売上が伸びています。休業期間中は、店舗を再開しても、売り上げは前年に対して3割ぐらい減るだろうと覚悟していました」
そう語るのは、三越伊勢丹HD社長の杉江俊彦氏だ。緊急事態宣言による外出自粛にともなう2カ月の休業により、「百貨店の雄」である三越伊勢丹は最終損益111億円と、2期ぶりの赤字に転落した(2019年度3月期決算)。
これから1年は“我慢の時間”が続く
「たとえ、コロナが収束したとしても、消費がV字回復することは難しいでしょう。最悪の想定よりはお客さまの単価は上がっていますが、しばらくはインバウンドの売り上げが戻ってくることは考えにくい。商品の供給過程である、サプライチェーンがズタズタになってしまったのも厳しい。イタリアやフランス、東南アジアや中国の工場の本格稼働までには時間がかかります。また、国内の景気も冷え込んでいる。夏や冬の賞与、業界によっては本給も削減せざるをえないところが出てくる。消費マインドはすぐには戻ってこないでしょう。
コロナが収束することを前提としても、来年の春夏商戦にようやく商品が揃い、来年の夏にオリンピックが開催できたら、それをきっかけに消費が戻るというのが、一番楽観的なシナリオです。すべてがうまくいったとしても、今から1年ぐらいは我慢の時間が続きます」
アメリカの百貨店ニーマン・マーカスやJCペニーが経営破綻するなど、百貨店を取り巻く状況は非常に厳しい。しかしその反面、コロナによる休業は、従業員に良い変化をもたらしたという。それは、ECサイトなど、デジタルの活用だ。