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社員全員が「ユーチューバー」に

「実は、去年の秋に行った従業員アンケートで、『今まで営々と百貨店の伝統商売でやってこられたのに、なぜデジタルに取り組まないといけないんだろうか』という意見がかなりあって、ショックを受けたんです。ところが、2カ月ぶりに会った社員が皆、『これからはデジタルだ』と言っていてビックリしました。ですから、コロナで損したかもしれないけれど、それで社員の意識がガラッと変わるんだったら、投資としては安かったかもしれないと話しているくらいです。

 もちろん、ECについては社長に就任した2017年当時から考えていましたが、もっとスピード感を出さねばと、コロナ休業期間中に相当ねじを巻きました。6月9日にローンチした三越伊勢丹の新公式サイト・アプリでは、休業期間に従業員がとても頑張ってくれて、現在約10万点の品物が掲載されています。同業他社さんはおそらく1万点もないと思うので、かなり多い数字です。

マスクをつけたライオン像

 ただ、ECサイトを作れば物が売れるなんていうことはありません。楽天やAmazonとの差別化も考える必要があります。楽天やAmazonは、商品の写真を撮り、スペックを記載するだけです。翻って、私たちが行うべきことは、販売する商品にもっと深い情報や、社員やお取引先の販売の方の想いを乗せていくことです。それがわれわれの一番の武器だと思っています。

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 そのためにも、とにかく社員の皆が、写真や動画を自分で撮り、出演して語り、ひとりひとりが情報発信できるようにしていこうと訴えています。全員がユーチューバーになるようなイメージですね。これから面白いことができそうです」

 1991年に約9兆7000億円あった百貨店業界の売上高は、2019年には約5兆8000億円まで減っている。縮小する業界で、「百貨店の雄」は「家族で楽しむハレの場所」というこれまでの百貨店像から脱皮できるのか。若者とのコンタクトや、地方店舗を閉店する理由、不動産により賃料収益を得る収入構造への転換、デジタルと路面店の相乗効果など、杉江社長が新しい三越伊勢丹を語るインタビュー「アマゾン・楽天にはできないことを」は「文藝春秋」8月号および「文藝春秋 電子版」に掲載されている。

出典:「文藝春秋」8月号

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文藝春秋

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アマゾン・楽天にはできないことを