「郊外の自然豊かなオフィス」で働く時代
これからの多くの企業は一部のヘッドクォーターのみを残して、組織は限りなくバーチャル化していくものと思われる。このようになると、現在都心部で大量に供給されているオフィス床は、無用の長物と化していくことが容易に想像される。
あらかじめ各社員の役割が明確に決まっているような事業であれば、オフィスという存在がなくても、仕事は十分回っていくからだ。
いっぽうでいくらネット上でつながっているからといって、全員がオンライン上だけですべての事業を遂行していけるとも思えない。そうした意味で、一部の職種ではオフィス床が必要であることに異論はない。
ただ、ポスト・コロナは、都心部の在り方を確実に変えていくことだけは間違いがなさそうだ。多くのオフィスは郊外などのコワーキング施設や企業が独自に展開するサテライトオフィスに移っていくだろう。そうしたオフィスは何も高層ビルである必要もない。高層ビルがステータスであった時代はすでに過ぎ去っているのだ。郊外の自然豊かなオフィスで働くのが普通の働き方になってくるだろう。
オフィス大変革時代の幕開け
ポスト・コロナ時代は多くのオフィスで集中から分散へと流れが変わってくる。賃料についてもこれまでは丸の内や大手町ならば坪5万円、六本木なら4万円など、ビルオーナーは、立地さえ確保すれば賃料は自動的に決定されるものと考えてきた。だからそうした土地をまず押さえることがビル業の第一歩だった。
三菱地所が丸の内や大手町を、三井不動産が日本橋を、森ビルが六本木を手放さないのは、その地を押さえていることにオフィスとしての価値があったからだ。
しかし、これからはオフィス立地についてそれほど単純な方程式は成り立たなくなってくる。都心部の良い立地に土地を押さえれば、まずはオフィスにして坪あたり賃料5万円とって事業は成立、あとは容積率の割り増し分でホテルや美術館を組み込んで、はい出来上がりといった単純な事業企画では勝負が難しくなってくるのだ。
ポスト・コロナはオフィス大変革時代の幕開けなのである。