「李洛淵(前首相)はエリート、私は平凡な土の匙」
次期大統領選挙候補レースでトップを維持している李洛淵前首相(67歳)に李在明京畿道知事(55歳)が突然、仕掛けたこの言葉から、2022年3月に行われる韓国の次期大統領選挙がにわかにかまびすしくなってきた。
この言葉、「エリート大学出身の頭でっかちには庶民の気持ちは分からないだろう、たたき上げの自分は庶民の気持ちが痛いほど分かるけどね」といったニュアンス。李在明知事の人気はその貧しかった生い立ち抜きでは語れない。
それは後述するとして、歯に衣着せぬ、時に過激な発言から、かつて「韓国のトランプ」と異名をとり、2017年の大統領選挙では党代表候補を巡り文在寅大統領とも争った李在明知事。2016年には日本と締結した「GSOMIA(日韓軍事情報保護協定)」に強硬に反対し対日強硬派として知られるのだが。
「私は天国を作れる」直球発言で賛否両論
李洛淵前首相23.3%、李在明京畿道知事18.7%。
7月20日、次期大統領候補者の好感度調査(世論調査会社「リアルメーター」)の結果に韓国メディアが色めき立った。中道系紙記者は言う。
「このポイント差は誤差範囲内で、次期大統領候補レース不動のトップで40%まで好感度が上がっていた李前首相の背中に李在明知事が追いついたといっていい。次の大統領選挙が、が然面白くなってきました」
李在明知事が頭角を現わしたのは、2016年秋。韓国を騒然とさせていた崔順実事件を「崔順実監督、朴槿恵大統領主演、助演は(与党)セヌリ党(当時)」とテレビ番組で形容し、喝采を浴びた。
格差社会是正のために「財閥解体」を主張し、「現在の大統領の権限だけで私は天国を作れる」(京郷新聞、2017年1月3日)と大言し、眉をひそめられたりもしたが、胸のすくような直球発言から“サイダー李在明”と呼ばれ、20~30代の若者や庶民を中心に人気が急上昇した。
それまで3%ほどだった支持率はぐんぐん上がり、2016年末の世論調査では次期大統領候補者として、文在寅大統領、潘基文前国連事務総長に続き3位に躍り出た。その後、「共に民主党」内の大統領選挙候補者争いに出馬し、3位となった。ちなみに1位は文大統領、2位は、性的暴行で懲役3年6カ月となり、現在服役している安熙正前忠清南道知事だった。