栞だったりブックカバーだったり本周りのグッズ。栞は絶対になくす自信しかないし、ブックカバーもイマイチめんどくさくて私は使わない派なのですが、本にお気に入りのブックカバーと綺麗な栞を施している人を見ると自分がそうできないぶん素敵に見えたりします。我が子に肌触りの良い肌着と綺麗なガラガラを与えるかのごとく、本に対して母性か父性といった愛情を注いでいるように見える。「こんだけ愛されて本もさぞかし嬉しかろう」と、大切にされてる本側の気持ちになって見ている方も嬉しくなってしまう。

 そういえば全くプライベートが見えない仕事相手の男性がふいに取り出した本に、おかんアートと思われるパッチワークのブックカバーがついているのを見たときに、ブワッと泣きそうな気持ちになったのを思い出しました。「それ、めっちゃ良いですね!」と言うと恥ずかしそうに「あ……ばーちゃんが使ってたやつで……なんとなくつけてるだけなんですけど」と言いつつも、そのブックカバーの何度も何度も洗濯されてくたっとした感じからほとばしる愛情よ。反則ですよ、そんなん。絶対いい人じゃないですか。

©犬山紙子

 そして栞にもこんなエピソードを聞いたことがありました。友人のKちゃん(女優)は学生時代好きな人から本(三浦しをんさんのまほろ駅前シリーズ)を借りて、それを返すときに金属でできたかわいい栞をわざと挟んだまま返却するということをしたそう。「本を返したらそのままやりとりが終わってしまうような気がして、でも面と向かってそう言うのは恥ずかしくて。『まだやりとりを終わらせたくない』と自分ができる精一杯がお気に入りの栞を挟んだまま返すっていう方法だったんです」と言うからかわいらしい。Kちゃんは見事彼とそこからデートするところまでこぎつけたわけですが、そのデート終わりに「栞、わざとだよ」と告白の代わりに伝えたところ、彼が「ハグしていい!?」と無茶苦茶に喜んで交際がスタートしたという……。急に小悪魔になったのか! という印象を受けるのですが乙女と小悪魔というのは表裏一体なのかもしれません。栞から始まる恋なんて、この現代にまだあったのねと感動していたのですが、その後二人は遠距離恋愛になり破局……。

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 そして彼は大学で毒の研究を始めたそう。栞一つで男心をここまで動かした女Kちゃんに振り回された結果、毒の研究にたどり着いた!? と邪推してしまうのも仕方ない。そしてその魔性があったからこそ、Kちゃんは女優になれたんだろうなあとも思うのでした。